2012年01月21日(土)00時05分

【コラム】デベロッパーから見たレビューの功罪

gears31.jpgレビュー統計サイトMetacritic

様々なサイトに掲載されるゲームや映画などのレビューを集積し、その平均点を数値化したサイトMetacriticが大きな影響力を持つようになった現状を、デベロッパーたちはどう感じているのだろうか?IGNが複数のデベロッパーにレビューに対する思いを聞いています。

アーティストやクリエーターと批評家の関係は、常に不安定であり続けてきた。ゲーム業界ではより顕著だろう。低いレビュー・スコアは、会社の収益、評判、そして未来に直結する。

これまでは、酷いレビューは「一個人の意見」として脇に追いやられる可能性があったが、今ではレビューの統計が全ての意見を一つの総合スコアに集約するようになった。そしてこのスコアこそ、小売店やパブリッシャー、そして従業員たちが重大な決断をする際に用いるものなのだ。総合スコアに頼りきっている現状にデベロッパーたちがフラストレーションを感じていても、決して驚くべき事ではないだろう。そこで我々は、Epic、Volition、Zombieといったデベロッパーたちに、その本音を聞いてみることにした。

これまで28作品を世に送り出しているZombie Studiosの共同設立者兼CEOのMark Long氏は次のように語る。

Mark Long: Metacriticは、長命のデベロッパーの存亡を左右する存在だ。長期的に見ると、各スタジオの平均点は徐々に下がる以外にない。2本しかゲームを出していないなら、簡単にMetacriticで勝者になれるのだが、そこが全ての元凶なんだ。一つのゲームや映画を語る場合ならMetacriticは素晴らしいツールだが、パブリッシャーが各スタジオの長期に渡るパフォーマンスを計る物差しに使用するとなると、真の問題が持ち上がってくる。

Assassin’s Creedフランチャイズでリード・ライターを務めるDarby McDevitt氏は、優れたレビューというのは、そのスコアに関係なく、役立つものだと語る。

Darby McDevitt: 優秀なクリエイティブ・アーティストは誰でも、建設的な批判を受け入れられるようでなければならない。それでも、仰々しいスコアに対する強迫観念は存在し続けるんだ。

Metacriticのレイティング・システムをざっと見ると、奇妙な現象が目に付く。現在のシステムで「良いゲーム」と見なされるのは、平均点が76点以上のものだ。これが映画になると、61点以上が「良い映画」と見なされるんだ。この差はどこから来るのだろう?70点の映画は見る価値があるが、80点のゲームは駄作ギリギリというこのシステムを、どう受け止めれば良いのだろうか?とても奇妙だ。

ゲームのインタラクティブ性だったり、一部分の出来が悪いと全体の質が下がってしまうという事実と関係しているんだろうか?それとも、Metacriticがゲームの批評家は簡単に褒めやすいと思っているのか、逆に欠点を指摘するのに及び腰だと思っているのか。その辺は分からないね。

volition-greg.jpgVolitionのGreg Donovan氏

Saints Row: The Thirdでシニア・プロデューサーを務めたVolitionのGreg Donovan氏は、MetacriticやGamerankingsといったゲーム・レビュー・サイトも、ゲーマーにとって非常にパワフルなツールになりえると語る。

Greg Donovan: バイヤーもレビュー・スコアを見るだろうし、各タイトルに対する見方に影響するはずだ。ゲーマーにとっても、どのゲームを買うか選ぶ時に当然レビューが影響するだろう。選択肢が沢山あっても、その全てを一度に買うお金がない人が殆どだろうからね。

プレーヤーには、レビュー・スコアに頼り過ぎず、レビュー本文を読んで欲しいと思っている。自分と趣味が似ている批評家を何人か見つけることが出来れば、ただ数字に頼るよりも、レビュー本文を読んだりすることで有益な情報を得ることが出来るんだ。数字だけだと、その内訳やスコアを正当化する裏付けが分からないからね。

レビューの要約としてスコアを使用するのは理解できるが、数値化したスコアを廃止してレビュー本文に力を入れる方向にシフトした一部のサイトには賞賛を送りたい。

メタ・スコアを提供するサイトは特に改善の余地があるはずだ、とDonovan氏は語る。統計サイトと提携しているサイトの中には、数値化したスコアを付けていないサイトもあり、その場合はレビュー本文の内容を判断して勝手にスコアを割り当てているというケースに代表される欠点を一例としてあげている。

Greg Donovan: こうした事例を見ると、主観性の外側で機能すべき統計サイトの目的そのものが成り立たなくなるように思える。今は迅速に情報を手に入れる世界になっていて、統計サイトはそうした需要を満たすものだが、ゲーマーには少し時間をかけて実際の本文を読んでもらいたいんだ。十分情報を仕入れた上で購入を決めたい場合は、特に読む価値があるはずだよ。

レビューは根本的に主観的なものなので、激論の的になりやすい。ゲームというのは、誰もが同一の直線的体験をする映画やテレビドラマと違い、批判をしやすいメディアなのだ。見出しがアクセス数に直結する現在のオンライン世界において、大作ゲームのレビューは複雑な事情を抱える事となる。Epic Gamesのプロダクション・ディレクターRod Fergusson氏は語る。

rod-fergusson.jpgRod Fergusson氏

Rod Fergusson: 中には、批判的になれるから批評家でいることを楽しんでいる人もいるだろうね。センセーショナリズムが全てのこのご時世、彼らは人目を引くような記事を書かなければらないんだ。珍しいことじゃないよ。Gearsも例外じゃないし、ほぼ全てのゲームで、「人と違う意見を書けば注目が集まるから、否定的な記事を書こう」というタイプのレビューが存在する。

作り手にとって参考になる建設的批判が数多く盛り込まれているため、レビューはデベロッパーにとって諸刃の剣になりえるとFergusson氏は言う。

Rod Fergusson: プレスや批評家は我々の消費者の情報源だから、当然彼らのことは大事に思っている。その反面、適切ではないかもしれない期待を抱いていることもあるから、愛憎入り混じる関係性といった感じだ。それが頭の体操なのか、ファンの望みなのか、その違いを理解しなければいけない。Gears of Warフランチャイズに寄せられた最大の批判は、その物語とキャラクターの描かれ方だろう。同時に、キャラクターに対してこれほどまでにファンが熱狂的になっているゲームは見たことがないんだ。我々の掲示板で「Cole」と言おうものなら、Coleのファンが決め台詞を山ほど書き連ねてくれるよ。

批評家がレビューの中で他のゲームに言及したり、過去作をプレーすらしていない場合、レビューは作り手にとって問題になる。Fergusson氏によると、Gears of War 3のレビューでは、Gears 1における物語上の問題点を指摘したものまであったという。

Rod Fergusson: 容易に批判できる部分をわざわざ引っ張り出して批判するような人もいるようだ。とはいえ、殆どはポジティブなものだし、素晴らしいスコアには感謝しているよ。

上海に拠点を構えるSpicy Horseの創設者American McGee氏は語る。

American McGee: Alice: Madness Returnsで気付いたのは、我々が1作目のファンへのサービスとして盛り込んだ要素を、多くの批評家が否定的に捉えていたことだ。ファンのレビューを読むと、ファンはそうした要素を大いに気に入ってくれていた。批評家と消費者のレビュー・スコアを比較してみて、一つ明確になったことがある。それは、我々は1作目やファンの期待に忠実なゲームを作ったのだが、その部分こそが批評家の減点対象になっていたということだ。Alice: Madness Returnsのレビューに回された批評家の全てが1作目のファンであるように期待するのは馬鹿げているとはいえ、1作目をカルト・クラシックたらしめた要因との繋がりを批評家が多少なりとも持っていたら、レビューも違った結果になっていただろうね。

レビューに関する議論は今後もしばらくは続くだろうが、現在のシステムは明らかな問題を抱えている。業界にとっての良いニュースは、ゲーマーというのは最も事情に精通した消費者であるという点だ。ハリウッドでは酷い映画が大ヒットするにもかかわらず、優れたゲームしか商業的成功を収めることが出来ない理由はそこにある。

[ソース: IGN]

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