2012年01月31日(火)01時59分

Julian Gollop氏が語るターン制ゲームの現状

xcom.jpgX-COM: UFO Defense

今では古典とされる1993年のX-COM: UFO Defenseや、3DSロンチ・タイトルのGhost Recon: Shadow Warsまで、Julian Gollop氏は20年以上ターン制ストラテジーを作り続けてきたベテラン開発者。

このインタビューでは、Julian Gollop氏が自らは関わっていない新生XCOMや、ターン制ストラテジーの現状について語っています。

▼ このX-COMリメイクで修正されていてほしい箇所はありますか?

Julian Gollop: ああ、もちろん。「カジュアル化」と呼ぶ人もいるけど、主に取っ付き易さだね。90年代初頭のゲームにはチュートリアルなどはなくて、全てが分厚い説明書に書かれていた。それが現在では誰も説明書は読まなくなって、ゲームがプレー方法を教えてくれると期待している。当然のことだよ。Ghost Recon: Shadow Warsでは、出来るだけ取っ付き易いゲームになるよう労力を注いだ。ゲームをプレーする過程でシステムの事を学べて、プレーヤーの興味を失わないようにしたかったんだ。

これは非常に重要な事だが、だからといってカジュアル化する必要はないんだ。プレーヤーがシステムを学ぶにつれ、徐々にゲームの複雑な要素が開かれていくからね。オリジナルのX-COMで難しかったのはそこで、プレーヤーは何をすべきか分からない段階でゲームに放り込まれ、決断を迫られてしまうんだ。

▼ X-COMの続編Terror From The Deepにも残っていた問題点ですね。

Julian Gollop: コードは全てMicroproseに渡したから、我々はTerror From The Deepには全く関わっていないんだ。難易度を上げすぎてステージを巨大にしすぎたため、プレーヤーが途中で飽きてしまうという、ターン制に付き物のミスを彼らは犯してしまったと思う。私は成功していると言っているわけではないが、ターン制ゲームで成功させるのが難しいのは、移動や攻撃、戦略など、全てのターンに必ず何らかの面白い決断を盛り込む事なんだ。

特に面白い決断もなく、ただユニットを動かすだけの退屈なターンが続くと、ターン制ゲームというのはすぐにつまらなくなってしまう。そのバランスが非常に難しいんだ。Ghost Recon: Shadow Warsでもこの問題に直面した。レベル・デザインのチームには指示をしたが、実現するのは容易な事ではないんだ。巨大で複雑にしたくなる誘惑は常に存在するので、難しいよ。

▼ スクリーンショットから判断すると、XCOM: Enemy Unknownはオリジナルの固定カメラと違う3Dカメラを搭載しているようです。方向感覚の喪失は、ストラテジー・ゲームでは問題になるんでしょうか?

Julian Gollop: スクリーンショットからはカメラがどう動くかは分からないけど、方向感覚の喪失は問題になる。戦場のヴァルキュリアは、戦略マップがあったから上手く行っていたと思うし、方向感覚は保たれていた。Firaxisがどうカメラをコントロールしているかは分からないが、取っ付き易いゲームにしたいなら、カメラは上手く制御する必要があるだろうね。

何がどこにあってどこに移動すべきなのかプレーヤーが混乱してしまうと、大きな問題になる。我々がオリジナルで使用した通常のアイソメトリック視点なら、大抵は上手く機能するんだ。Ghost Recon: Shadow Warsでは、カメラを自由に動かせる方が良いという意見が多く、大変な議論になった。プレーヤーが方向感覚を失うし、レベル・デザインにも影響するから、私は反対だったんだ。あらゆる視点から見ても美しい3Dのステージをデザインするのは無理だからね。だから我々はステージを単一視点からデザインした。最終的には固定で行くことで意見がまとまったよ。Firaxisはカメラを自由に動かせるようにしているみたいだね。

▼ でもミニマップはありますね。

Julian Gollop: ああ、でもあまりプレーヤーの役には立たないと思う。

grfs_3d_05_17431.jpgGhost Recon: Shadow Wars

▼ オリジナルに含まれていた要素で発展させて欲しい部分はありますか?

Julian Gollop: ああ。オリジナルでは極めてシンプルな形で行っていた、プロシージャル・ミッションや地形生成だ。我々は小さなセクションを作り、それをランダムに組み合わせることで、毎回異なるマップを作り上げていた。残念ながらUFO自体は固定だったので、毎回異なる面白い戦術ミッションを生成するようなものが見てみたいんだ。

AIの発展も興味深いだろうね。オリジナルでは、UFO学に傾倒している人だけが知っているような、UFO神話をより掘り下げたかった。キャラクターの成長といったRPG要素も、より深いものにしたかったんだ。成長の選択肢がもっと多くなったら、面白いだろうね。

▼ スキル・ツリーような?

Julian Gollop: ああ、スキル・ツリーは良いコンセプトだ。お気に入りだよ。成長の道筋を選べて、そこにエイリアンのテクノロジーを絡ませることが出来たら面白いだろう。Psionicスキルもバランスなどを修正したい。だが、ゲーム・システムの土台にはこれ以上手を加えることはないと思う。もちろん、もっと面白い武器や馬鹿でかい爆発は追加したいね。

あとは、より説得力のある破壊可能な地形だ。キャンセルされたPS2/PC向け3D戦略ゲームThe Dreamland Chroniclesでは、我々も完全に破壊可能な建造物を実現しようとしていた。特にPS2では実現が極めて困難で、開発可能なマップが限定されたが、それはむしろ良かったよ。静的な要素だらけのだだっ広いマップよりも、相互干渉可能な要素が多く含まれた、小規模で焦点が絞れたマップの方が良いからね。XCOMでは、木々や遮蔽物を破壊したり、爆発で地面に大きなクレーターを作ったり出来たら最高だね。

▼ 現在のAIは、そうした動的な環境を実現するのに十分だと思いますか?

Julian Gollop: 現代のコンソールならもちろん可能だよ。プログラム面である程度の努力は必要になる。技術的な労力の殆どはグラフィックとアニメーションに注がれ、AIはないがしろにされがちなんだ。様々な力を条件とする物質の現実的な物理演算シミュレーションもあるが、あまり多くのゲームは使っていないみたいだね。最近のゲームの多くは、相互干渉という面では極めてベーシックなものが多いのが実際のところだ。グラフィックを原始的にすれば、90年代のPCでも実現可能なゲームが殆どだよ。AIはあまり進化したとは言えないし、相互干渉環境に関しては全くだよ。

▼ スクリーンショットから判断して、XCOM最新作ではそれらが実現していると思いますか?

Julian Gollop: 恐らくそれほど予算はかけていないと思うから、比較的安全牌で行くだろうね。ゲーム・エンジンに関しても、技術的な革新性はないだろうと思う。プロシージャル生成環境や更に洗練された地形の破壊モデル、AIシステムといった革新は興味深い。Firaxisがそれらを実現できれば最高だが、スクリーンショットを見る限り、そういう方向性ではないだろうね。

▼ 2010年に1人称シューターのXCOMが発表された時はどう感じましたか?

Julian Gollop: InterceptorやEnforcerのような、ターン制コンバットとは正反対の方向に行ってしまったX-COM続編と同じ路線だったので、とても残念に感じたよ。私から見てもそうだし、X-COMファンの多くにとってもガッカリだった。Firaxisがターン制版も作っているという唐突なニュースを聞いた時は、まるで2Kがあらゆる側面をカバーしようとしているんじゃないかという感じだ。

殆どのパブリッシャーと同様に、2Kもターン制ゲームは完全にニッチで、時間の無駄だと信じていたんだろう。90年代の中頃から抱えている問題だよ。最初にターン制の息の根を止めたのはRTSだ。90年代中頃から急激に増えだしたRTSは、Command & Conquerの成功で最も巨大なジャンルになりかけたほどだ。だから、ターン制ジャンルは90年代中頃に既に死んでいたとも言えるかも知れないね。

1048.jpgXCOM

▼ そうした認識が変わりつつあるという感じはしますか?ソーシャル・ゲームにはターン制ゲームプレーを基にしたものが沢山ありますよね。

Julian Gollop: その通りだね。ターン制自体は極めてニッチなものというわけではないんだ。考えてみれば、ポケモンも核の部分はターン制のシステムを利用している。実際、ポケモンは色々な面でX-COMに非常に類似しているんだ。仲間をリクルートして、どこで戦うかという自由度が高いが、物語自体は直線的だ。そこに、戦術的、戦略的なメタゲームが含まれている。熱中度の高い複雑なゲームなんだ。ポケモンは爆発的に売れているが、核の部分はターン制システムだ。それだけでも、ターン制がRPGオタクのためだけのニッチなものではないことを証明しているだろう。

Facebookに関しても君の言うとおりだよ。ああいうゲームの多くは、リアルタイム要素があるから完全なターン制と言えないとはいえ、テンポはかなり遅いから、よりターン制に近いと言えるね。

▼ モバイル・ゲームはどうですか?非同期なので、ターン制は上手く機能しますよね。

Julian Gollop: そうだね、興味深いよ。iPhoneのターン制ゲームには注目している。これといってオリジナリティのあるゲームはなくて、中にはIncubationの実質的なクローンのUFO Onlineというゲームまである。ターン制の世界にはあまり興味深い進展はないのが現状だね。私にとって一番大きなインパクトがあったのは、間違いなく戦場のヴァルキュリアだよ。その前ならゲームボーイウォーズアドバンスだ。2001年に初めてプレーした時は、とにかく驚かされたよ。革新の余地があるのは確かだが、Firaxisが何をするのかは分からない。どのくらいオリジナルに忠実な作品になるんだろうね。

[ソース: Edge]