2012年05月16日(水)05時04分

【インタビュー】Cliff Bleszinski氏 インタビュー 〜 日本やホラー・ゲームへの思い

cliffy-b2.jpgCliff Bleszinski氏

GamasutraがEpic Gamesのデザイン・ディレクターCliff Bleszinski氏にインタビュー。日本やホラー・ゲームへの思いなどを語っています。

▼ 我々の多くと同じように日本製ゲームで育った貴方も、今では欧米で最も尊敬されるデザイナーの一人です。稲船氏がGDCで語ったところによると、日本のゲーム業界は競争する意欲を失い、それが欧米の台頭に繋がったと彼は感じているそうです。日本が再び競争力を取り戻すためには、何が必要だと思いますか?

Cliff Bleszinski: この世の終わりのことを良く考えるんだ。明日突然(Epic Gamesの最高経営責任者)Tim Sweeneyに「おいCliff、お前は大馬鹿もんだ。お前はクビだからすぐに出て行け」と言われたら、俺はどうするだろう?自分のことは優れたゲーム・デザイナーだと思っているから、複数の選択肢があることを願っているよ。

でも、自分の顔を売って自分自身をブランドとして築き上げるのと同時に、優秀な人材を周りに集めて最高のゲームを作るのも重要なんだ。俺が思いついた選択肢の一つが、今すぐEpicを辞めて、日本のデベロッパーのコンサルタントになって、フランチャイズの観点からだけでなくゲーム・メカニックやフィーチャーの観点から、より欧米市場向けのゲームを作る手助けをするというものだ。健全なコンサルティングになると思うよ。

Epicのチームと俺は、色々な面で欧米製ゲームの決定版を作ったと言える。『Gears』は「ガチムチ」ゲームという欧米ゲームのイメージを固めたし、オンラインのフィーチャーや協力プレー、カバー、ストーリーテリングなどもそうだ。でも、当然改善の余地はある。

だから俺が日本にアドバイスをするとすれば、ディスク・ゲームの市場においては、マルチプレーは無視できないということだ。なにも全てのゲームにマルチプレーを適当に付けるべきだと言っているわけじゃない。例えば、『Shadows of the Damned』は最高のクレージーなアドベンチャーで、台詞も最高に笑えるし、鍵と扉のシステムも良かった。最高に楽しいぶっ飛んだゲームだったが、協力プレーがなかった。別に対戦プレーでなくとも、他のプレーヤーと関わる方法は無数に存在するんだ。

『Demon’s Souls』と『Dark Souls』が良い例だ。我々が「ミングル(混ぜる)プレー」と呼ぶ、シングルプレーとマルチプレーの境界線を曖昧にする最高に革新的なゲームだったが、あれは日本製なんだよ!日本にもその辺を理解しているデベロッパーが確実にいるんだ。あの2作品は欧米のデベロッパーの多くに影響を与えているし、キャンペーンがメインのゲームにオンライン要素を盛り込む際のヒントを与えてくれている。

『Skyrim』で俺の彼女がプレーしている時、『どうぶつの森』みたいに家のチェストに宝物を入れておいたりできたら最高だよ。オーブが浮かんでる『Fable』の世界みたいな方向に我々が進むべきなんだ。

3人称シューターを作る場合・・・『Vanquish』にマルチプレーがなかったのは犯罪だよ。あのゲームは欧米風という意味では最高峰だし、ゲームプレーも素晴らしい。そしてあの空気感・・・『Gears』が西部劇の機関車だとしたら、『Vanquish』は日本の新幹線だよ。アリーナで他のプレーヤーと一緒に飛び回ったり、スライディングすべきでない理由は何もないはずだ。

理由はなんであれ、地獄への道は善意で敷き詰められているものだ。恐らく予算や開発期間の制限でマルチプレーは搭載しないことになったんだろうが、最終的には、素晴らしいゲームにも関わらず、多くのゲーマーからフル・プライスで発売初日に買うゲームではなく、レンタルや中古で済ませても良いゲームだと見なされてしまった。

今パッと思いつくアドバイスはそんなところだよ。俺は日本が大好きだからね。『トランスフォーマー』から任天堂、平日に放映されていたアニメ、『マジンガーZ』、『ボルトロン』まで、俺が子供の頃に好きだったものは全て日本から派生したものだ。だから、日本のゲームには消えて欲しくない。

2021.jpg『Vanquish』

▼ 私は、後にキャンセルされた日本の会社のマルチプレー・ゲームの開発に関わった経験があるので、逆の視点から見てきました。当時彼らが手掛けていたマルチプレー・ゲームはそれだけだったんです。

Cliff Bleszinski: 「何でもいいからマルチプレーを付けろ」というアドバイスだと思われそうで怖いな。そういう意味じゃない。それは大きな間違いだよ。そのゲームの本質を掴んだ、ゲームに関連性のあるマルチプレーにしないと駄目だ。

▼ 事後検討を色々読んでみると、「我々が目指すゲーム体験はこうで、そこにマルチプレーとキャンペーンをフィットさせるにはどうすれば良いのか」ではなく、「よし、シングルプレーは大方完成した。ではどんなマルチプレーにしたいのか考えよう」という感じなんですよね。

Cliff Bleszinski: 何故未だに『零』のマルチプレーがないんだい?赤の他人が入ってきて幽霊役になり、俺を死ぬほど怖がらせて、その恐怖度に応じてレーティングを付けたりするようなマルチプレーだ。豪華なかくれんぼみたいなものさ。

現実世界に幽霊が存在するような、拡張現実版の『零』をVitaで出して欲しい。確か任天堂はそれに近いゲームを出してるんだよね?実際の世界の中に幽霊を忍ばせるようなARG(代替現実ゲーム)があってもいいはずだ。実際に人が死んだ場所とかにね。

それは少しクレージーすぎるかもしれないが、そういう考え方が進化には必要だと思う。『零 紅い蝶』をプレーした時のことは忘れられないよ。ソファで足を上げながらプレーしたんだ。幽霊に足を捕まれそうで怖かったからね。当時はもう30歳くらいだったし、あらゆるホラー映画を見尽くしたくらいの俺でも、怖くてプレーを止めてしまったくらいだ。JホラーからKホラーまで、ホラー映画は見まくったはずなのに、インタラクティブ・メディアの持つパワーを思い知らされたよ。それが現在は、ジャンル全体が死んでしまった。

『Silent Hill 2』は俺のオールタイム・フェイバリットの一つなんだ。ああいう体験が恋しいよ。でも、オンライン・ストアが常備された常時接続のコンソールが発売された暁には、本当に怖いホラー・ゲームが20ドルや30ドルで復活を遂げるだろうね。死ぬほど怖いけど僅か6時間程度だったり、エピソード形式だったり。

▼ ええ、『Silent Hill』シリーズの現状は勿体無いですね。

Cliff Bleszinski: 『Silent Hill』シリーズを格付けするとしたら・・・俺にとっての『Silent Hill』シリーズは映画『ハイランダー』と同じなんだ。『ハイランダー』は俺の中では1作目しか存在しない。『Silent Hill』の場合は『Silent Hill 3』までしか存在しないんだ。酷い言い方に聞こえるかもしれないな。『Silent Hill』に関わった人たちには謝罪したい。

ホラーというのはコメディと同じで、非常に難しいんだ。僅かな違いで全く怖くなくなってしまう。それを自分で作らなければならないというのはとにかく困難で、まるで自分をくすぐったり、自分自身を怖がらせようとするようなものだよ。そういう感性を持ち合わせた人間というのは極めて稀だ。

俺にとってのトップは『Silent Hill 2』だ。次は『3』で、その次が『1』だね。『1』は最高のゲームだけど、PS1のグラフィックは現代には通用しないんだ。ちょうど3Dの出始めの頃で、テクスチャも遠近法がおかしかったりするし、そこらじゅうをいろんな物が泳いでいて、「こりゃ無理だ」となってしまうんだ。

『Silent Hill 2』は俺のオールタイム・フェイバリットの一つで、ゲームでは滅多に触れられることのない『惑星ソラリス』のようなテーマにまで踏み込んでいる。素晴らしいよ。

silent-hill-2.jpg『Silent Hill 2』

▼ 私自身は、低解像度の『1』のグラフィックは素晴らしかったと思っていて、少なくとも私にとっては、目の前のものが理解できなければできないほど、恐怖を感じました。

Cliff Bleszinski: 素晴らしい指摘だ。俺も将来的にはホラー・ゲームを作ってみたいし、色々なメカニックを考えているよ。一つ考えているのは1人称のゲームで、モンスターがプレーヤーの周囲にいる時が一番クリアで、実際に目をやるとはっきりしなくなっていくんだ。見えないのがホラーの真髄だからね。

もう一つ頭にあるメカニックは、これは実現しそうにないから盗んでくれて構わないけど、1人称視点で、巨大なクリーチャーに付け狙われている。主人公には透明になる能力があるんだけど、透明になるには目を閉じなきゃいけないんだ。『Metal Gear』っぽく、クリーチャーから身を隠すんだよ。アラート状態になると、目を閉じて耳を澄ませなきゃならない。

名称は思い出せないけど、実際に周囲に何かがいる感覚を作り出せるサウンド・テクノロジーがあるんだ。ずっと目を閉じて透明のままでいるわけにもいかないから、いつかは目を開けなければならない。クリーチャーはどこかに行っていてもう安全かもしれないし、すぐそばにいるかもしれないんだ。楽しいメカニックだと思うけど、どうかな。

▼ 『Biohazard 4』は傑作でしたが、ホラー・ゲームがアクション寄りへとシフトする転機にもなりましたよね。「アクション寄りだった『Biohazard 4』が人気だったのだから、アクションを入れないと駄目だ」という。しかし、実際はアクションが成功の理由ではなかった。

Cliff Bleszinski: 結局のところ、ホラー・ゲームでいることを止めてアクション・ゲームになってしまったんだ。いくらラジコン操作でプレーヤーを縛っても、主人公がレーザーサイト付の銃でゾンビの大群をなぎ倒すガチムチであるという事実に変わりはない。もうハサミを持った大男から逃げ回る少女ではないんだ。それはそれで問題ない。

だが、急にこの世の終わりがやって来たらと考えると恐ろしいよ。Tim Sweeneyに「お前はもうクビだ!」と言われて、カプコンから「ウチに来て次の『Biohazard』を作ってくれよ!」と言われたら、「なんてこった」って感じだ。アクションとホラーというのは両立させるのが本当に難しい。一方ではランボーになって殺しまくり、もう一方では恐怖に怯える少女にならなければいけないからね。

仮に俺が『Biohazard』を手掛けるとして、この2つの要素を両立させるとしたら、各要素を別々にするだろうね。Leonタイプのキャラクターと、怯える少女っぽいキャラクターの2種類を登場させて、万能感と恐怖を個別に描くんだ。『Gears 1』にはそういう要素が少しあるだろう?

それなら上手くいくと思うし、異なる2種類のゲーマーにアピールできる可能性がある。とにかくがんがん倒しまくりたくて、少女のパートはやりたくないというならそれも可能だし、少女パートだけをプレーしたいなら、それも可能という風にね。実質2種類のゲームを作ることになるが、完全なアクションではなくホラーのDNAを維持するには、そうしなければいけないのかもしれない。勘違いして欲しくないけど、俺は『Biohazard』フランチャイズと開発者たちには最大限の敬意を持っているよ。

resident_evil_4.jpg『Biohazard 4』

▼ 『Gears』に多大な影響を与えたことからも、貴方が『Biohazard 4』の大ファンだということが分かりますが、『Gears』はアクション・ゲームなので、納得がいきますね。

Cliff Bleszinski: プロダクションの観点から見て、もし俺がカプコンの経営者だったら、『Biohazard』を分割するだろうね。馬鹿な考えかもしれないが、とりあえずアイデアを色々言っているだけさ。1本目は、『Biohazard: Merc Ops』みたいなゲームを作って、超強い兵士としてゾンビを倒しまくるんだ。

次が『Biohazard: Special Victims Unit』だ。こっちは普通の一般人が主人公。1体のゾンビなら恐怖を感じつつもなんとか撃退できるかもしれないが、それが2体3体と増えていくと、『ウォーキングデッド』みたいに逃げることしかできなくなってしまう。異なる視点を見せるんだよ。

▼ どうやらカプコンは『Bohazard 6』で正にそれをやろうとしているようですが、どちらの要素もそこまで振り切ってはいないみたいです。

Cliff Bleszinski: 『Biohazard 6』の予告は素晴らしかったが、スリリングではあっても怖くないんだ。目に見えないからこそ恐怖が生まれる。それが全てのホラーのルーツなんだ。

▼ 『Biohazard 4』が優れていたもう一つの要素は、全てのシーンが小規模の箱庭で構成されていたところです。町全体を再現したエリアがあり、その中でプレーヤーは生き残る方法を考えなければならない。

Cliff Bleszinski: ああ、『Halo』と同じやり方だ。『Gears 3』では我々もそれに挑戦したし、今後も全体をよりオープンにしていくつもりだ。リプレー性が高いほど、ゲームの質は高くなる。たとえ一度しかプレーしなくてもね。

リプレー性に関しては「何周もする人間なんていないから、リプレー性なんて気にするな」と言う人も多いが、それは間違いだ。プレーヤーに提示される選択肢やプレー方法が多ければ多いほど、それだけ話のネタにもなるし、YouTubeでも盛り上がるんだよ。

▼ そうですね。2人のプレーヤーが異なる体験をすることができれば、たとえ1度しかプレーしなくとも、ゲームの奥の深さに気付き、それがゲームの評価を高めることになるし、そこから様々な逸話が生まれることにもなる。

Cliff Bleszinski: プレーヤーをそういう考え方に慣らせておけば、その期待に応えるような続編を作ることができる。たとえば、俺は『Oblivion』をプレー済みだったから、『Skyrim』をプレーする時には狼男になったりとか、色んなクレージーなことを試すことができた。掲示板や動画を目当てに人がネットに集まるんだ。そういう方向に進化させていきたいと思っている。

▼ 今年のGDCではお互いセッションを行い、私は「明確でない特定のプレーヤー層ではなく、開発者としての自分をターゲット層にゲームを作ろう」という話をしました。自分が興味を持てるものを目標にしようと。多くのインディ系デベロッパーが長けているのはそこなんですが、規模の大きいチームからはそういった作品があまり出てきません。作家性に重きを置いたゲームが少ないですよね。

Cliff Bleszinski: その通りだね。

▼ 他のフランチャイズを自分ならこうするというような話をしてきましたが、作家性の希薄なゲームが多い現状は良いことだと思いますか?それとも悪い傾向だと?

Cliff Bleszinski: 超クリエイティブでコラボレーションに長けたゲーム作家が不可欠だろうね。『Gears of War』フランチャイズのアイデアは全て俺が思い付いたものではないことはこれまでにも明言してきたが、プロジェクト全体に俺のパーソナルなDNAが刻み込まれている。『Gears 3』のラストでMarcusとAnyaがビーチにいるのは、俺は週末になると婚約者と一緒にビーチに出掛けているからなんだ。

極めてパーソナルな作品を作るチャンスが貰えたら最高だよ。ニューイングランドで過ごした幼少期は、森に行ったりして楽しかった。家の裏の丘には、誰かが投げ捨てたタイヤがいくつか転がっていたりしたよ。

まだ幼かったけど、タイヤを持ち上げるとそこにはヘビとか小さな動物がいたりした。学校に行く前に毎朝そこに行くと、必ず何か見つけることができた。『ゼルダ』の隠し要素みたいなものだよ。

まだあまり詳しくは話せないけど、森の中に転がっている木を集めて、要塞を作ったりしたんだ。子供ながらに初めて自分の家を持とうとしていたような感じさ。そういったDNAを、俺が今メインで手掛けている『Fortnite』に織り込むことができるかもしれない。

s-23.jpg『Uncharted』

▼ おっしゃるような発見がメインのゲームができたら素晴らしいですね。最初の『Uncharted』をプレーした時は、まるでおとり商法かと思いました。探索や発見は最高に楽しいのに、実際はメキシコ人を延々と撃ち続けるだけだった。

Cliff Bleszinski: あのゲームは、実はネバダ州の国境沿いの緊張の暗喩なんだよ。なんてね。ともかく、Naughty Dogと『Uncharted』は大好きだよ。彼らは超一流だし、彼らの得意分野で右に出る者はいないだろう。でも、『Uncharted』に欠けていると感じるのは、『Uncharted 3』でトレジャー・ハンターをプレーしていて、たまにFaberge Eggを見つけたりするけど、ジャングルにいてちょっと横道に逸れようとしてもできないんだ。

もし俺がNaughty Dogだったら・・・おっと、まるで「俺が世界を支配していたら」みたいなインタビューになってきたな。ともかく、俺ならマルチプレー版の『Uncharted』を作るよ。各プレーヤーが独自のNathan Drakeになって、財宝を探して世界中を駆け回るんだ。「ペルーで新たなルーンが発見された!」とかいうイベントを開催したりしてね。

▼ そこまでの道のりを競い合うと。

Cliff Bleszinski: レースだね。誰かが先に目的地に着いたら、罠やおとりを残したりできる。プレーヤー同士の裏切りなんかもあったりして、スクリプトではなく、プレーヤー主導でゲームプレーが生まれる。

ジャングルを作ってプレーヤーに競わせるんだ。『アメージング・レース』の財宝版みたいな感じだよ。インディ・ジョーンズみたいに、世界中を駆け回るんだ。女性プレーヤーはフェドーラとクールな革のブーツ、俺はベストを着たりできるようにカスタマイズ性を持たせて、40年代とかを舞台にするのさ。最高に楽しくなるはずだよ。

▼ (Epic傘下で『Shadow Complex』などを手掛けた)Chairのように、小規模の作品を手掛ける予定はないんですか?あなたは大作専門のようですが。

Cliff Bleszinski: 時間が足りないんだ。Epicが取り組んでいる難題の一つが、「全ての作品を壮大(Epic)に」という標語が示すとおり、小規模の作品をそのまま送り出すことができずにいる点なんだ。(Epicが手掛けたiOS向けテック・デモ)『Epic Citadel』を完成させることができたのは驚きだよ。ゲームではなくただのテック・デモで、宝箱を置いて「友人と交換しよう!」なんてやったんだ。『Infinity Blade』でChairは、ちょっとした最高のモバイル・ゲームを作る予定だったのが、結局はキャンペーンやソーシャル・フィーチャーが満載のコンソール・ゲームを完成させたんだよ。

[ソース: Gamasutra]

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