2012年07月25日(水)05時54分

【コラム】ネット上で最も憎まれているゲームをプレーする夜

962.jpg

昨年11月に発売された『Call of Duty: Modern Warfare 3』は、爆発的なヒット作であると同時に、インターネットでは史上最も憎まれているゲームの一つ。

そんな『MW3』のマルチプレーを、IGNオーストラリア支部のLuke Reilly記者が、発売から半年以上が経過した今になって初めてプレー。ファンの声も交えながら、『MW3』成功の秘訣と憎まれる理由を探るコラムを。

『Modern Warfare 3』をプレーして過ごす夜を、骨の折れる仕事のように表現する人はいないだろう。少なくとも、カジュアルなゲーム好きなら。楽しそうじゃないか、と思うかもしれない。煉瓦を積み上げたり、客に酒を注ぐよりはマシだろう?仕事じゃあるまいし。

だが、私の親しい友人たちの反応は違う。『MW3』をプレーして夜を過ごすという私の計画は、彼らを当惑させた。普段から『Call of Duty』をよくプレーする友人たちは、私がこのシリーズに何か恨みでも持っているのではないかと思い込み、これほど長く抵抗し続けてきたことに驚いていた。シリーズのファンではない友人たちはというと、私が今更プレーしようと思った理由が理解できず、いつの間に、そして何故『Call of Duty』のファンになったのか混乱しているようだった。

真実はそのどちらでもない。私は、『Call of Duty』に対してこれといった感情を抱いていない。少なくとも、最近は。『Modern Warfare 3』のシングルプレー・キャンペーンを発売週にクリアし、そのまま棚にしまってそれっきりだった。シリーズで一番好きなのは『Call of Duty 2』で、今後もしばらくは揺るぎそうにない。

私が『Modern Warfare 3』をプレーしたいと思ったのは、シリーズへの愛情からでも、憎悪からでもない。ゲームの歴史上、最も愛されていると同時に最も嫌われているゲームの一つをプレーしてみたかったのだ。

11134.jpg

『MW3』のようなゲームの記憶のされ方は、後世の人々を混乱させるだろう。Activisionの報告によると、アメリカとイギリスでの売り上げが発売初日だけで650万本を越えた。発売から5日での売り上げはあらゆるエンターテイメント商品を上回り、1週間足らずで7億7500万ドルを突破。そして、未だにXbox Liveで最もプレーされているゲームでもある。

Infinity WardとSledgehammer Gamesの開発チームも、その数字は知っている。日々どれだけのプレーヤーがプレーしているか、彼らは細かく把握できる。だがMetacriticのユーザー・スコアを見ると、今世代で最も嫌われているゲームの一つと言っても過言ではないほど。『Call of Duty』関連記事のコメント欄はほぼ全て、シリーズを嫌うゲーマーたちによる辛らつなコメントで埋め尽くされてしまう。

『Call of Duty』を嫌いなゲーマーがいることが奇妙なのではない。奇妙なのは、『Call of Duty』を嫌う声が他のどのゲームよりも目立っていることだ。

シドニーで政府関係の職に就いている20歳の女性Gabriela Victoria Vivas氏は、『MW3』を好きな理由をこう語る。

Gabriela Victoria Vivas: 友達と一緒にプレーできるところが好き。ソーシャル面が大きいわ。平日も、週に3、4回は婚約者と一緒にプレーする。Search and Destroyをプレーしながらお喋りしたりしていると、楽しくてあっという間に時間が過ぎてしまうの。新しい友達もできるし、鬱陶しい連中はミュートしちゃう。

インターネットで散見される『Call of Duty』フランチャイズ全体への憎悪は凄まじく、ここまで明確に好きだと言われると、奇妙に感じてしまうほど。記録だけを見れば『MW3』はゲーム史上最大のヒット作なのだが、ポジティブな意見は殆ど聞かれない。嫌いな理由よりも、好きな理由を述べる方が難しいようだ。

ブリスベンでシェフをしている18歳のTyrone Lio氏は、ソーシャル要素がとても重要だと語る。

Tyrone Lio: 家を出なくても友達と遊べるんだ。シェフという仕事は時間帯が不規則だから、ソーシャル・ライフは殆どないんだよ。

5125.jpg

確かに、取っ付きやすいゲームだ。マルチプレーなど全くプレーしたことがない状態から、最初のデスマッチにどっぷりと浸かるまでの時間は、笑ってしまうほど短い。ドリトスの袋を開ける方が時間が掛かるくらいである。ここまでシンプルだとは予想していなかった(ざっとメニューに目を通したところ、私には決して理解できないスタッツやコンフィグが山ほど出てきたが)。

私が殺されるまでの時間は、約5秒ほどだった。私を殺したのは、このマッチでヘッドセットを付けている数少ないプレーの1人で、とある罵り言葉を呟き続けていた。彼もオーストラリア人だったのだが、オーストラリアではあまり軽蔑的な意味合いで使われない単語だったので、彼がどういったニュアンスでその単語を使っていたのかは定かではない。

全てがあまりにスムーズに進むことにも、私は驚かされた。恐らく、もしこれが『Call of Duty』でなかったら、そのテキパキとした手順に誰もが舌を巻くことだろう。だがこれは本物の戦争ではない。これはまるで、8歳の子供に水鉄砲を渡して、庭に解き放つようなもの。他の子供をずぶ濡れにした子供が勝者だ。私はいつも、ジックリと歩を進めようと努め、曲がり角などを注意深く索敵していくが、背後から疾走して来た敵にいつもやられてしまう。

マッチが終わると、誰かが私のK/D率を馬鹿にするように読み上げた。私がその数字の意味を理解していると思ったのだろう。マッチ中に私を(恐らく)侮辱したプレーヤーが1位だった。彼は勝ち誇るようなことはしなかったが、そういうタイプではないのか、それとも勝って当然と思っているのか、その辺は明確ではない。

963.jpg

Nathan Schleemann: 20分だけプレーすることもできるし、延々とプレーし続けることもできる。マルチプレーのルールはとにかく簡単だからね。ただ他のプレーヤーを撃てばいいんだ。今は技術が発達したお陰で、好きなゲームをしながら、友達と喋ったりすることができるようになった。

私は数時間ほどプレーするタイプだ。「楽しむ」という単語は適切ではないが、「我慢する」という単語もまた違う。ちょうど、レストランに行ったらお気に入りのメニューが切れていた時のような感じ。違う料理を頼み、確かに悪くないとはいえ、一番食べたかった料理とは違うのだ。

もうこれ以上はプレーしたくない、というところまでプレーしたが、なぜこのシリーズが成功しているかは良く分かる。面白いのは、数多くのファンが『MW3』のマルチプレーを熱心に支持する理由こそ、それ以外の人間が嫌う理由でもあるという点だ。親しみやすさである。

Gabriela Victoria Vivas: 嫌う人が多いのは、革新性がなくなったから。スキンを変えただけの、同じゲームに感じる。

『MW3』との比較でまず名前が挙がるのが、『Battlefield 3』だ。当然の比較といった感じではあるが、妥当な比較かどうかは微妙なところ。『Modern Warfare 3』は、他の1人称シューターよりも、『FIFA』のようなゲームに近いと言うこともできるかもしれない。色々な飾りが付け足されたとはいえ、『FIFA』最新作と同じように、『MW3』も前作と非常に似通ったゲームだ。そしてまた、『FIFA』最新作と同じように、そのジャンルを支配する存在でもある。

『FIFA』は今絶好調。『FIFA 12』は、あらゆるスポーツ・ゲームの中で最も売れたゲームとなっている。そんなシリーズを、EAはわざわざ危険に晒すような真似はしない。『FIFA 13』も、これまでのフォーミュラをより洗練させたものとなっている。『Call of Duty』も同じ。この2つは同じ製品なのだ。『Call of Duty』のマルチプレーはスポーツであり、EAがサッカーを刷新できないように、Activisionもルールを変えることはできないのである。

Nathan Schleemann: 『Call of Duty』を嫌う人が多いのは、毎年新作が出ては何百万も売れて、似たようなゲームだらけになっちゃってるから。でも、Activisionにとってはそれで上手く行っているんだ。

60億ドル以上売り上げているのだから、上手く行っているのは確かだろう。

[ソース: IGN]