2012年08月26日(日)22時06分

【コラム】サバイバル・ホラーを解剖する

silenthill.jpg『Silent Hill: HD Collection』

『Sillent Hill』や『Biohazard』の登場で頂点を迎えたサバイバル・ホラー人気も、今ではすっかり下火に。そんなサバイバル・ホラーの人気の秘訣や本質を分析するGame Informerのコラムを。

サバイバル・ホラーの魅力は、完璧な恐怖演出までの積み重ねに尽きる。著名なシリーズには必ず、ジャンルを決定付ける印象的な瞬間があるもの。『Clock Tower』のシザーマンや『Silent Hill』のピラミッドヘッドの姿を初めて目にした時のことを覚えているかな?だが今世代では、僅か数シリーズを除いて、ジャンル自体が衰退してしまったように感じられる。トドメの一撃となったのは、『Biohazard』のプロデューサー河田氏がインタビューで、シリーズは今後もアクション路線を継続していくことを改めて明確にすると同時に、純粋なサバイバル・ホラーは今の市場では成功しないと語ったことだ。画面からにじみ出る緊迫感を求めてこのジャンルをプレーし続けてきた私にとって、これはとても残念なことだ。このジャンル人気の秘訣を、我々は忘れてしまったのだろうか?そこで今回は、サバイバル・ホラーの特徴や人気の理由、そしてルーツを探ってみたいと思う。

サバイバル・ホラーに銃はいらない

敵にヘッドショットを食らわせるというのは復讐のの究極の形だが、サバイバル・ホラーの本質とは程遠い。恐ろしい状況をいかに打破するか、それこそがこのジャンルの肝なのだ。現実的に考えて、銃がそこら中に転がっているわけはないし、たとえ一丁手に入れたとしても、銃弾は限られている。物資管理が極めて重要であり、限られた銃弾をいつ使うのか、という判断をプレーヤーは迫られるのである。常に一歩先を考えておくのと同時に、瞬間的な判断力こそがサバイバルの鍵となる。だからこそ、多くのゲームにおいては自らの足こそが最大の武器なのだ。『Amnesia: The Dark Descent』や『Slender』といったゲームでは、走って逃げたり、敵の攻撃を避けることが、サバイバルに欠かせない要素となっている。結局のところ、必死で逃げ回ることこそが、サバイバル・ホラーというジャンルの精神なのではないだろうか?銃という名の安心をプレーヤーに与えず、パニックを強いることが手に汗握る体験を生むのだ。

現実的なごく普通の一般人を主人公にする

サバイバル・ホラーの主人公は、往々にしてごく普通の一般人であることが多い。プレーヤー自身、プレーヤーの身近にいそうな人物に、プレーヤー自身を投影させるのだ。1作目の『Silent Hill』で私が好きだったのは、銃を構えた際のエイミングが揺れることで、その主人公が銃を撃つのは人生でこれが初めてなのだろうということを実感できたところだ。物語も大きな要因になる。例えば1作目の『Silent Hill』では、必死で娘を探すHarryの焦燥感を見事に捉えることで、プレーヤーを謎の解明に引き込んでいった。愛する者を失ったり、全てに見放されたり、何者かに襲撃されたりといった、現実に誰もが持っている問題や悪夢によって、冒頭から感情移入させるのだ。ゲームに現実味があればあるほど、心を引き裂かれるような体験をすることができるのである。

clocktower.jpg『Clock Tower 3』
普遍的な悪夢が生む環境

なんでもない日常の風景を、世にも恐ろしい空間に変貌させることができるところも、サバイバル・ホラーの魅力の一つ。学校や地下鉄、病院、住居といった現実に存在する場所を、闇に包まれた場所に変貌させることができれば、恐怖は天井知らずであり、真に迫る体験を生み出すことが可能となる。例えば、インディ・ゲームの『Slender』では、プレーヤーは森という馴染み深い場所に閉じ込められてしまう。真っ暗で霧の濃い、自らの足音以外は静けさのみが支配する森という空間は、それだけで不気味さが増すのである。それらの要素が組み合わさったところに、遂にSlender Manが飛び出してきた時、プレーヤー自身も思わずジャンプしてしまうはずだ。もう一つの好例が、『Silent Hill』に登場する悪名高き裏世界だ。日常的な風景を、グロテスクで血みどろの恐ろしい風景に変貌させてしまう。風景が様変わりすることで周辺環境をコントロールできないという点を強調し、それが無力感を強めているのである。そうした環境の空気感も忘れてはならない。ムードを作り出すために音楽と効果音は不可欠であり、それらが強烈な緊張感を作り出しているのだ。

脳裏に焼きつくサイコロジカル・スリラー

ホラー・ゲームの多くは、プレーヤーを驚かせることを目標にしている。これを成し遂げるための最良の方法は、積み重ねだ。ある程度は、プレーヤーの頭に入り込んで正気を蝕む必要がある。『Amnesia: The Dark Descent』は最高の例で、最初の一歩を踏み出す以前から、プレーヤーの不安感を煽るのである。勝つためにプレーするのではなく、世界観と物語に没入するようシンプルにプレーヤーに伝えつつ、「Amnesiaは危険な場所で、君は極めて無防備である」ということを叩き込むのだ。最も恐ろしいのは、次の一歩がどこに繋がるかが全く分からなくなることからくる驚きであり、その先には恐らく拷問や胸糞の悪くなる映像が待ち受けているのだ。そうした場面を巧みに積み上げることができれば、いざ実際に何かが起きた時に、プレーヤーはまるで自分がその場所にいるかのように体が反応し、絶叫したり、思わず飛び上がってしまったり、恐怖に慄きながら後ろを振り向いたりしてしまうはずだ。サバイバル・ホラーが上手く機能するためには、次の一歩が最後の一歩になってしまうのでは、という不安感を持たせなければならないのである。

amnesia-darkdescent2.jpg『Amnesia: The Dark Descent』
決断力/パズルのユニークな解法

サバイバル・ホラーの魅力の一つが、簡単に手に入るものは何もないところ。誤ったドアを開けてしまっただけで、罠の部屋に閉じ込められてしまうゲームは多い。シークレット部屋のドアを開けるため、隠されたコードを発見させるゲームもある。しかし、環境こそが巨大なパズルになっているゲームが殆どであり、環境を上手く利用できるかどうかが生き残る鍵になるのである。『Clock Tower』『Amnesia: Dark Descent』『Demento』といったゲームでは、敵から逃れるため隠されたスポットを発見したり、安全地帯にたどり着くために周辺のオブジェクトを利用するよう求めてくる。こうしたパズル最大の強みは、パニックに陥りながらも素早く頭を回転させ、複雑なアイテム一式を正確に組み合わせていくところにある。こうしたパズルは、プレーヤーの達成感を与えるだけでなく、自らの脳みそと機転こそが追っ手から逃れるための最大の武器であるということを改めて示しているのである。

プレーヤーを獲物気分にさせ、手に汗握る素早い思考を強いることこそ、サバイバル・ホラーの真骨頂だ。まるで自らがホラー映画の登場人物になったかのように、ホラー映画よりも真に迫った恐怖を感じることができるのである。だが、すっかり様変わりしたジャンルを見て、サバイバル・ホラーは刷新が求められているのだろうか?と疑問に思わずにはいられない。両方のおいしいところ取りをすることは無理なのだろうか?『Dead Space』は、アクション・ゲームとして見事に恐怖を提供してくれていたではないか。我々コミュニティは、ジャンルの好きな部分と嫌いな部分、そして将来どんなゲームを期待しているのか、たっぷり話し合うべきだろう。サバイバル・ホラーは、今まさに分かれ道にある。HDグラフィックとサウンドの恩恵を受けるべきなのだが、実際にはどうだろうか?

[ソース: Game Informer]

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