2012年12月18日(火)04時23分

『BioShock Infinite』のKen Levine氏が語るElizabeth開発の難しさ「実存感を持たせることが最も困難だった」

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IrrationalGamesのKen Levine氏が『BioShock Infinite』に登場するコンパニオンAIキャラクターであるElizabethについて触れ、質の高いコンパニオンAI開発の難しさを語っています。

Ken Levine: とにかく困難だということは分かっていた。考えれば考えるほどエキサイトしたし、恐怖でもあったんだ。

質の高いコンパニオンAIはそれほど多くない。『Half-Life 2』のAlyxが最後だろうね。『Skyrim』は最高のゲームだが、コンパニオンAIへの期待はそれほど高くなかった。これまで我々は主人公が喋らないゲームを多く手掛けてきたので、今度は喋る主人公にしたかったが、それなら会話をやり取りする相手が要るだろうということはわかっていた。

『BioShock 1』の象徴的なキャラクターであるBig DaddyとLittle SisterのAIが、Elizabethを作る上での土台になったとLevine氏。

Ken Levine: Big DaddyとLittle Sisterは、主人公の周辺をうろつくスクリプト処理ではないAIの、極めて初歩的なプロトタイプだ。大抵のAIは、何もしていないか主人公を攻撃しているかのどちらかだからね。Big DaddyとLittle Sisterは、行動のパターンが豊富だ。スクリプト処理による行動パターンも存在するが、それがいつどこで起きるのかは決まっていないし、プレーヤーがその邪魔をしてしまうこともあるかもしれない。常にプレーヤーの目に触れる位置にいて、なおかつ無敵の存在でなければならないElizabethのAIを作る上で、そういった経験が土台となった。しかし、そのハードルは極めて高かったよ。まず、彼女は台詞を話すキャラクターだからね。

Elizabethを実在感のあるキャラクターにすることが最も困難だったという。

Ken Levine: AIは普通、周辺の物には反応を示さない。周りを観察したりしないし、興味すら持たないものだ。そこで我々は、Elizabethを周囲に興味を持って干渉するようなAIにすることに時間を掛けた。Elizabethが幽閉されていたという事実もこの点を際立たせているが、だとしても、人間というのは常に何かを見ているものだ。人間が道を歩く時は、一般的なコンパニオンAIがするように、ロボットみたいにただ道を歩くだけじゃない。Elizabethが興味を持ち、干渉できる対象をゲーム世界に盛り込む必要があった。彼女のアニメーションを飾る、様々な感情状態を盛り込むことも不可欠だったし、そこにサウンドも加わる。彼女を実存感のある存在にすることが、このゲームで最も困難かつ重要なことだったんだ。

更に、彼女が興味を持つようにしたオブジェクトも配置している。我々にはプレーヤーがどこに行くか、何をするのかが分からないから、Elizabethは様々なアルゴリズムによって色々な対象に惹かれるようになっているんだ。

現実世界の俳優というのは、予めソフトウェアを実装しているようなもの。部屋に入るよう俳優に指示すれば、俳優は部屋に入る。部屋に入って座るよう指示すれば、部屋に入って座るだろう。俳優はそのやり方を知っている。俳優なら人間の動きというものを知っているから、辺りを見渡したり、道行く人に手を振ったりする。タバコの煙で咳き込んだり、人間らしい行動を取るだろう。だがElizabethは、そういった行動にも助けが必要なんだ。彼女がそういった行動を取った場合、それは開発チームが一生懸命努力して命を吹き込んだからなんだよ。

Levine氏は、技術面だけでなく脚本も重要だと語ります。

Ken Levine: 彼女を好感の持てるキャラクターにするには、脚本が素晴らしくなければいけない。これが難しい。好感の持てるキャラクターを書くには、自分好みの優れたキャラクターにするよう努力しなければならない。だが同時に、我々は彼女を単なる傍観者ではなく、武器や物資を渡してくれる相棒にすることを開発初期の段階から決めていた。邪魔になったり、守る必要があったり、またはその逆で、多くのAIが陥りがちな、プレーヤー以上に活躍してしまうようなキャラクターにはしたくなかったんだ。そこでまず、プレーヤーと同じ行動は絶対に取らせずに、BookerとElizabethに全く異なる役目を与えることにした。重複する行動が存在しては意味がない。プレーヤーがやれば済む話だからね。

Elizabethは、プレーヤーの視界に入るといった、コンパニオンAIの多くが持つ欠点を克服しています。

Ken Levine: それを実現するのは極めて困難だ。我々にはプレーヤーの行動は予測できないからね。Elizabethがプレーヤーの背後に回った時、プレーヤーが向きを180度変えて彼女がいる場所に行こうとすると、そこに立っている彼女が邪魔になってしまうだろう?だから、極めて慎重に考える必要がある。

ゲームがプレーヤーの行動をしっかりと観察する必要がある。そこに力を入れているんだ。Elizabethがプレーヤーの邪魔にならないよう、ちゃんとパートナーとして機能するように、ゲーム側が必死で頑張っているんだよ。

先日公開された最新予告編では、まるでディズニー・アニメのキャラクターのように表現豊かなElizabethの表情や仕草を見て取ることができます。

Ken Levine: 彼女の動きや表情は、ある程度誇張する必要があることは最初から分かっていた。彼女との距離が離れていることも多いからね。彼女の近くにいても、少し遠くに離れていても、彼女の行動が理解できるようにする必要があったんだ。私がゲームをプレーしていて喜びを感じる瞬間の一つが、Elizabethが何か面白い行動を取っている様子を目の端で捉えた時なんだ。ある程度様式化した誇張表現を使うことで、そういった行動が目に留まるようにしているんだよ。

そうしたElizabethの表情豊かな一面が、感情を表に出さないBookerとの興味深いコントラストになっているとLevine氏。

Ken Levine: 主人公が戦う様子を初めて目にした時、彼女は恐れおののくんだ。生まれてずっとタワーの中のおとぎ話のような世界で生きてきた女性が、突如として血生臭い世界に放り出されるんだ。そういった世界で生きてきたBookerは、彼女と正反対の男だ。Bookerの声優Troyが感情をあまり込めずに演じているのは、意図的なものなんだ。Bookerはこういうことを経験してきたが、Elizabethにとっては初めての体験だ。そこを強調したかった。そういった要素全てが、彼女のキャラクター描写に反映されている。

開発の初期段階には、実現が困難であることから、Elizabethを削除するよう助言されたこともあるという。

Ken Levine: 実現が本当に難しかったから、開発中に数え切れないほど「Elizabethは削除すべきだ」と言われたよ。開発の初期段階にステージのテストをした時、Elizabethがどこにも見当たらないことがあった。どこにいるのか尋ねると、「あそこのクローゼットに隠れている」と言われたよ。どう管理すべきか、誰にも分からなかったんだ。ステージを構築する際、他にも考慮しなければならない要素が沢山ある。殆どのFPSは、仲間がいても主人公の後ろで銃を撃ったりするだけだから、考えなくても済むんだよ。

幸運なことに、関係者には不運かもしれないが、私はなんとしてでもElizabethは入れると主張したんだ。本当に大変だった。最終的には、Liz(Elizabethの愛称)部隊を結成することになった。『BioShock 1』のAIを手掛けたJohn Abercrombie、脚本とディレクションを担当する私を筆頭に、アーティストやアニメーター、モーション・キャプチャーの面々が揃った、多分野横断チームだよ。

[ソース: Eurogamer]