2012年12月27日(木)05時49分

【コラム】2012年の見過ごされたゲームたち

2012年にリリースされたゲームの中から、その質の高さにもかかわらずあまり大きな注目を集めることができなかったゲームをまとめたコラムを、Destructoidが掲載しています。

毎週のように大量のゲームが発売される昨今、全てのゲームが勝者にはなれないが、だからといって残りが全て敗者というわけではない。

ゲーム屋の投売りワゴン、ネットオークション、そしてSteamセールには要注目だ。ゲーム・オブ・ザ・イヤーからは漏れてしまったとはいえ、以下に挙げたゲームはどれもプレーする価値があるものばかり。選外となってしまった佳作、個人的なお気に入りとでも考えて欲しい。誤解が原因か、それとも誰もプレーしなかっただけか、理由はともかく手に取る価値があるゲームばかりなので、何らかの形で祝福すべきだと感じている。

以下のどれかにセールで遭遇した暁には、賢明な買い物ができたことを遠慮せず感謝して欲しい。

『Thomas Was Alone』(PC)

1505.jpg

『Thomas Was Alone』が殆どのゲーマーに素通りされたのも無理はない。単色の長方形が主役のパズル・プラットフォーマーを一目見ただけでは、『Thomas Was Alone』の特殊性は理解できないからだ。パズル自体の難易度は低いものの、本作の目玉はナレーションとストーリーテリングなのである。長方形の登場人物たちはどれも大作ゲームの主人公よりも個性的であり、演出が最小限に抑えられているにもかかわらず、全てのキャラクターに感情移入してしまうのだ。他のゲームが30時間を掛けても達成できないキャラクターの掘り下げを、『Thomas Was Alone』は僅か3時間で成し遂げてしまう。物語自体もユニークで面白いという事実は、最高のボーナスに過ぎないのだ。

『Sine Mora』(XBLA/PSN/PC)

2337.jpg

『Sine Mora』は今年私がプレーしたゲームの中でも最高ランクだが、私の知人は誰もがタイトルすら聞いたことがなかった。端的に言って、『Sine Mora』は最高のゲームプレーとグラフィックを備えた、手応えのあるシューターだ。時間の流れを遅くするというコンセプトがメインの素晴らしいゲームプレーを、山岡 晃氏の美しいサウンドトラックが引き立てている。

一般的なヘルス・バーの代わりに、プレーヤーは時間操作メカニックと連結した「時間ダメージ」を食らうことになる。プレーヤーが上手いほどパワーを巧みに利用しなければならないので、頼りすぎるのは極めてリスキーなのだ。更に、その裏には擬人化されたユニークなクリーチャーや、大量虐殺や性的暴行といった思いテーマを扱った、優れた大人向けの物語が存在するのである。

シューターへの先入観のせいで素通りしてしまうゲーマーが多いのは残念だが、少しでも興味があるなら、次にセールがあった時には是非チャンスを与えてあげて欲しい。

『Tribes: Ascend』(PC)

2336.jpg

友人に『Tribes: Ascend』を勧めると、「『Halo』っぽいね」という返答。パワー・アーマーを着た青軍と赤軍が銃撃戦を繰り広げるのだから、確かに見た目はそうかもしれない。と同時に、私は『Tiny Wings』を連想した。そう、あのチャーミングなiOSゲームも、『Tribes: Ascend』に似た推進力があるのだ。とにかくテンポが速く、プレーヤーは常に動き回らなければならないし、マップが広大なため、リスポーンしてすぐにやられてしまうようなこともない。激戦区に辿り着くまでには、少し時間が掛かるのである。

『Tribes: Ascend』は、いつもなら私が忌み嫌うキャプチャー・ザ・フラッグも好きにさせてくれた。フラッグを抱えて逃げる時などは、ド迫力のチェイスが展開するのである。空中での一騎打ちも頻繁に発生し、どこからともなく飛んで来て勝利を奪い取ることも可能だ。派手な短期決戦が日常茶飯事の『Tribes: Ascend』は、私にとって今年最高のマルチプレー・ゲームとなった。来年以降も王座に君臨し続けるかもしれない。

『The Real Texas』(PC)

1566.jpg

『The Real Texas』は頭から離れないゲームだ。「君のことが頭から離れないよ」と女性を口説く時と同じで、私の頭の中は『The Real Texas』のことでいっぱいなのである。私はゲームでの出来事を頭の中で何度もリプレーし、異なるアプローチを試みた。それでもまだ全貌は解明できていない。

『The Real Texas』は犯罪的なほど見過ごされたゲームで、プレーヤーを笑わせると同時に、考えさせてくれるのだ!ゲーム史に残る舞台設定上での、一風変わったアドベンチャーであり、終盤にはこれまたゲーム史に残るボス戦が用意されている。じっくりと腰を据えてプレーすべきゲームである。

『Natural Selection 2』(PC)

1501.jpg

とにかく対戦ゲームが大好きな私は、『Counter-Strike』や『Team Fortress Classic』、そして『Day of Defeat』といったゲームと共に育ってきた。最近も、『Dota 2』『TF2』『SpyParty』といったゲームに夢中になり、今では『Natural Selection 2』の虜である。リアルタイム・ストラテジーと1人称シューターを融合させた『Natural Selection 2』は、チームワークが不可欠のゲームであり、そのゲームプレーも素晴らしいの一言だ。

『Natural Selection 2』で展開されるチームワークは、驚くほど機能している。開発元を含む本作のコミュニティも素晴らしく、敷居が高くなりがちな対戦ゲームを、初心者にも優しい体験へと昇華している。FPSやRTSの対戦ゲームに多少なりとも興味があるなら、『Natural Selection 2』をプレーすべきだ。

『Sound Shapes』(PSN)

1565.jpg

美しいアート・スタイルを備えたシンプルなプラットフォーマーという形式の、実質的なミュージック・シーケンサーと言えるゲームが、何故ここまで無視されてしまうのか?Deadmau5やBeckでさえ魅力を感じて参加し、新曲を提供しているというのに。このゲーム唯一の目標は、全てのサウンドの欠片を集めて音波の地形を完成させ、ゴールに辿り着くことだけ。実にシンプルなアイデアだが、『Sound Shapes』はそのアイデアを唯一無二のゲームに仕上げている。だが、このゲーム最大の魅力はレベル・エディターであり、独創性と素晴らしいステージの数々で『Sound Shapes』に無限のエンターテイメントを提供するコミュニティなのだ。

『Spec Ops: The Line』(Xbox 360/PS3/PC)

1831.jpg

一目見ただけだと、『Spec Ops: The Line』は典型的な勧善懲悪のミリタリー・シューターに見える。それこそが本作の狙いなのだ。ゲームを進めるにつれ、プレーヤーは主人公たちが直面する現実、もしくは思い込まされている現実が、主人公たちの内面と衝突していることに気付き始めるはずだ。『Spec Ops: The Line』は、今世代のミリタリー・シューターの中でも最も恐ろしい物語をプレーヤーに突きつける。開発元のYagerは、戦争の醜さをこれでもかと見せ付けることで、ヒーロー体験を望むプレーヤーの期待を粉々に破壊する。ゲーム中には謎めいたメッセージが数多く登場するが、その中の一つが、『Spec Ops: The Line』の本質を見事に表しているだろう。「これでもまだ英雄気分か?」

『La-Mulana』(PC/WiiWare)

1564.jpg

WiiWare版『La-Mulana』は日本以外でリリースされないのではないか、と諦めかけた頃、遂に『La-Mulana』は海を越えた。まずはPCに、そしてしばらくしてWiiWareに。これは実に喜ばしい。『La-Mulana』は、世界中のレトロ・ゲーム好きがプレーすべき傑作だからだ。

それにしても、レトロ極まりないゲームである。「レトロ」と聞くと、普通は超手強いボスや即死トラップを想像するだろう。『La-Mulana』の敵やプラットフォーミングに関しては確かにその通りなのだが、同時に本作は、次に取るべき行動や行き先が一切分からない時代へのオマージュでもあるのだ。初期の『Zelda』や『Metroid』で隠し通路を見つけるのが大変だったと思っている人は、『La-Mulana』に大量に用意されたほぼノーヒントのパズルの数々を試してみるといい。ペンとメモ帳を片手に、ヒントをメモしたり自作マップを作ったりせずに本作をクリアできると思っているなら、大きな間違いである。

確かに難易度は高いが、『La-Mulana』は決して理不尽なゲームではない。時間と労力を惜しまずに臨めば、次の一歩はおのずと見えてくる。驚異的なピクセル・アートに輪をかけてすばらしいサウンドトラック。ゲーム史上最も豊かな『メトロイド』+『悪魔城ドラキュラ』風ゲームの一つである。

『赤い刀 真』(Xbox 360)

1383.jpg

『赤い刀 真』を「90年代以来のCaveの最高傑作」と呼ぶのは時期尚早かな?私は気にせず断言してしまおう。90年代以来のCaveの最高傑作だ!弾幕シューターの傑作の数々を送り出し続けてきたCaveは、弾が命を奪うだけでなく命を救う存在にもなりえるという革新的なシステムによって、フォーミュラを刷新して見せた。初登場となるClimaxモードは、より強力な武器の存在と、敵弾を操作することでスコアを稼ぐシステムによって、爽快感を増している。『赤い刀 真』は、ただ敵の弾を避けて撃ちまくるだけのゲームではなく、ジャンルのコア・メカニックをメタゲームで包み込むことによって、興奮が途切れないスリリングなアーケード・シューターに仕上がっているのである。

『The Darkness II』(Xbox 360/PS3/PC)

2426.jpg

郵便受けに届けられた『The Darkness II』を目にした時、私は軽い吐き気を催した。「こんなゲーム、プレーしたかったっけ?」E3のデモやレビューから判断して、私は『The Darkness II』に全く興味を惹かれなかったのである。だからこそ、その物語に引き込まれ、ビジュアルに魅力を感じ、ユニークで残虐な近接戦闘に中毒になった時、私はショックを受けた。『Halo 4』とは逆に、キャンペーンは最高にテンポが良く、謎めいた物語に興味を喚起させられた。『Black Ops 2』とは対照的に、戦闘には自由があり、新種の敵やシナリオで私に挑戦を挑んでくる。かつてはその1年を代表するカリスマ・シューターだと思っていたFPSをありきたりだと感じるようになるとは、実に皮肉なものだ。私のアドバイスを聞いて、是非『The Darkness II』を手に取って欲しい。

『Gotham City Impostors』(XBLA/PSN/PC)

6101.jpg

『Gotham City Impostors』は、私が今年一番楽しんだゲームだ。それだけで私のナンバー1の座を勝ち取るには充分だし、実際しばらくはナンバー1の座を維持していた。とはいえ、来年はもうそんな楽しみを味わえないであろうということは認めざるを得ない。これはゲームの責任ではなく、今年最も新鮮で喜びに満ちていた対戦シューターをみすみす死なせてしまった、デベロッパーとパブリッシャーの責任だ。少ないマップ、中途半端な無料プレーへの移行、極めて小規模なコミュニティなど、『Gotham City Impostors』の明るい未来は見えてこない。だが、光り輝いていた時期を思い出そう。ビルの屋上をラペリングで行き来し、バットウィングで滑空し、ダブル・ジャンプで敵を飛び越えて背後にショットガンを食らわせ、勝利へと突き進んだ時期のことだ。

『Binary Domain』(Xbox 360/PS3/PC)

4173.jpg

殆どのゲーマーは、『Binary Domain』を「平凡でありきたりのシューター」と一蹴した。だが、馬鹿っぽくて楽しいこのアクション・ゲームの奥底には、実に繊細な物語が存在するのである。世界情勢の変化や国粋主義をベースに、Yakuza Studioは人間性に関する辛らつな問いを投げかける。一体誰が人間で、誰が人間ではないのか?物語は、自らを人間だと思い込まされ、容姿も人間そのものなロボットHollow Childrenを中心に展開。ロボットに支えられた社会を忌み嫌う人物たちが登場する『Binary Domain』は、抑圧を取り巻く社会的役割、特に19世紀アメリカにおける奴隷制度との非常に興味深い類似を見せている。Hollow Childrenの存在が、誰も認めたがらない灰色の領域を浮き彫りにする。だが、そうした問題が目に前に突きつけられた時、人々は生まれた頃から抱いてきた偏見を見直す必要に迫られるのである。

『Gravity Daze』(Vita)

881.jpg

『Gravity Daze』への愛情を一つの文章にまとめるのは難しい。セルシェード・アニメとフレンチ・コミックを融合したビジュアル・スタイルには即座に虜になったし、これほどまでに独創的で美しいアート・スタイルには、なかなかお目にかかれないはずだ。生き生きと描写された街並みを巧みに疾走するだけで楽しいし、猛烈な速度で落下する重力シフト・メカニックには、奇妙な催眠感、癒しを感じるような爽快感が存在するのである。凝りに凝ったディテールはもちろん、ゲームプレー、物語、アート・スタイル、音楽の全てが見事に合体する様は文字通りの芸術品だし、一風変わったカラフルな物語が、ファシズム軍国主義や政変といった題材を遠まわしに扱ったシュールな実存主義的思案へと移行していくところには心底感心させられた。史上最高ランクのゲームであり、これだけのためにVitaを購入すべきである。

『Thirty Flights of Loving』(PC)

1563.jpg

15分。簡潔な15分のゲームプレーにおいて、『Thirty Flights of Loving』は殆どの大作が15時間掛けて描くよりも、エモーショナルで効果的なストーリーテリングを備えている。無愛想なフレンチ・ニューウェーブ風ジャンプカットを多用する『Thirty Flights of Loving』は、スリリングな強盗劇から銃撃戦、シュールなダンス・パーティー、驚くほど掘り下げられた人間関係、そしてオレンジが詰まったゲームだ。ノン・リニアな編集スタイルはつまり、プレーヤー自らが物語を繋ぎ合わせなければならないということを意味している。だが、プレーヤーの好奇心を掻き立てる曖昧さは存分に残されているのだ。『Thirty Flights of Loving』は、シンプルなビジュアル・スタイルと簡潔な物語とは裏腹に、とにかく情報量の多いゲームなのである。僅か15分なのだから、この隠れた名作をチェックしない理由は何もないはずだ。

『Papo & Yo』(PSN)

1562.jpg

E3は華やかで仰々しいゲーム業界の頂点かもしれないが、私の個人的なゲーム・オブ・ザ・ショウは『Papo & Yo』だった。アルコール中毒の父親に愛憎入り混じる感情を抱いていた、Minority Gamesのクリエイティブ・リードVander Caballero氏の幼少期を寓話化した作品である。この寓話における代理プレーヤーは、ブラジルの貧民街に住む少年Quicoと、彼の恐ろしい友達Monster。『Ico』や『ワンダと巨像』といったゲームからの影響を隠さない『Papo & Yo』は、極めてパーソナルな作品に仕上がっており、これは大人数が関わったせいで薄味になってしまうことの多いビデオゲーム業界においては類稀な偉業だし、終盤の展開はプレーヤーの胸に深く突き刺さるものだ。Caballero氏の目標は、この世界をほんの少しだけ改善すると同時に、同じような状況に置かれている人々が逃避し、共感できる空間を提供することにある。そして、彼は見事にその目標を達成した。

[ソース: Destructoid]

カテゴリ: 業界 タグ: -