2013年01月17日(木)12時58分

【コラム】アドベンチャーの時間 - 偉大なジャンルの復活

『The Walking Dead』の大成功で一躍メインストリームへと復活を遂げたアドベンチャー・ゲームに焦点を当てるコラムをIGNが掲載しています。

ゲーム・オブ・ザ・イヤーを総なめにし、4000万ドルを売り上げた『The Walking Dead』が証明したことがあるとすれば、それは優れた物語を渇望する人が多いということだ。「替えのきく脅威から世界を救う大男」よりももっと洗練された物語が理想的。これは何も今に始まったことではなく、ゲーム業界は長年にわたってこうした欲求に応えようと映画の真似をしては失敗。だが、多くのクリエーターは映画やテレビドラマを真似ることなくその方法論から学んだり、ゲームの歴史から引用したりすることで、独自の方法論を開拓してきた。

こうした動きの中心になっているのが、ビデオゲームの黎明期から存在したアドベンチャー・ゲームというジャンルだ。初期のコンピューターでテキスト・アドベンチャーとして産声をあげたこのジャンルは、90年代初頭にポイント&クリックへと進化する過程で最先端の脚本やアニメーション、ボイス・アクトのショーケースとなるが、コンソールの台頭やプラットフォーマー、1人称シューターといったジャンルがメインストリームになったことで、勢いを失った。

コンソールはそのコントローラーのせいで当時はPC中心だったアドベンチャー・ゲームには向いていなかったし、90年代末から00年代初頭にかけてゲーム市場を支配したコンソールから姿を消してしまったことが、ジャンル全体の衰退へと繋がった。だが、ジャンル自体が死に絶えることはなく、進化したのだ。1987年からアドベンチャー・ゲームを手掛け、最新作『The Cave』の発売を控えるRon Gilbert氏は言う。

Ron Gilbert: アドベンチャー・ゲームが絶滅の危機に瀕していると言う人がいるが、そんなことはない。ただ単に、他のジャンルの人気がアドベンチャー・ゲームを遥かに凌駕したというだけのことなんだ。だが、現在はAndroidやiOSのゲームがこれまでゲームとは無縁だった人たちを引き入れているお陰で、アドベンチャー・ゲームの人気も増しているんだ。アドベンチャー・ゲームというのは、キャラクターや物語、反射神経ではなく頭を使うパズルがメインだから、カジュアル層にも受け入れられるジャンルだと考えている。それが、アドベンチャーの人気が盛り返している理由の一つだろうね。

ron-gilbert.jpg『Maniac Mansion』『Monkey Island』で有名なRon Gilbert氏

より優れた物語をゲームに求めているのは、カジュアル層だけではない。我々ゲーマーも同じだ。長年、我々はことゲームとそのストーリーテリングに関しては、極端な認知的不協和に悩まされ続けてきた。ゲームにおける物語は、せいぜいあってもなくても良いアクションの添え物に過ぎず、最悪の場合はアクションの邪魔をする存在であり続けてきた(『Uncharted』のような、ナイスガイが大量虐殺をするという二分法はその正反対に位置する)。一方アドベンチャー・ゲームは、すべてが物語を中心に構成されている。インタラクティブなストーリーテリングにとって、理想のジャンルなのだろうか?

Ron Gilbert: 私が考えるアドベンチャー・ゲームというのは、少なくとも私がデザインする時には、物語を最も重要な要素として捉えている。パズルは物語を進行させるために存在するものなんだ。力強い物語の存在しないアドベンチャー・ゲームを作るのは、極めて困難だ。山ほどの恣意的なパズルだけのゲームになってしまうからね。アドベンチャー・ゲームというのは、インタラクティブ・ストーリーを語るのに最も適していると思っているよ。

anothercode.jpg『アナザーコード』

アドベンチャー・ゲームをメインストリームに復活させたのは、任天堂のDSが最初だ。タッチ画面のお陰でポイント&クリックが再び息を吹き返したわけだが、DSのアドベンチャー・ゲームは過去の焼き直しではなく、2画面を活かした創意工夫に富む遊び心に満ちたものだった。『アナザーコード』は、恐ろしい物語にDSで最も優れていたと言える2画面パズルを組み込んでいる。日本ではアドベンチャー・ゲームがノベル・ゲームに姿を変え、『逆転裁判』や『ウィッシュルーム』『極限脱出 9時間9人9の扉』、そして『レイトン教授』といったゲームが生まれている。日本製PCゲームの大半はノベル・ゲームであり、携帯機でも独占状況は変わらない。

一方欧米では、アドベンチャーが3次元へと進撃した。『Heavy Rain』はアドベンチャー・ゲームだったし、2006年の『Dreamfall』は、1999年の傑作ポイント&クリック『The Longest Journey』の3D続編だ。TelltaleとDouble Fineは、コンソールにおいて古典的ポイント&クリックを復活させ、進化させた。とはいえ、Gilbert氏が指摘するように、アドベンチャーがメインストリームへの完全復活を果たしたのは、タッチ画面の功績が最も大きいと言える。タブレットやスマートフォンでは、ポストモダンな『Sword and Sworcery EP』『Hector』『Machinarium』『Lili』といった最新アドベンチャー・ゲームと共に、『Monkey Island』や『Broken Sword』、そして爆発的ヒット作『Myst』といったクラシックのリマスター版を購入することができる。DSのヒット作『ゴーストトリック』や『おさわり探偵』もモバイルでリリースされている。

ここ数年は、PSNとXBLAがコンソールにおけるアドベンチャー・ゲームの主な窓口になってきた。PCでアドベンチャー人気が最高潮に達していた時代、ポイント&クリックの傑作群は殆ど移植されなかったが、コンソールのアドベンチャー人気は証明されている。PS1でリリースされた『Broken Sword』はかなりのセールスを記録しているし、『The Walking Dead』が大成功を収めたことも、コンソールではアクション性の強いゲームしか求められていないという根強い思い込みを払拭してくれるはずだ。

Ron Gilbert: 『The Walking Dead』は良い例だと考えている。古典的なポイント&クリック・アドベンチャーではないが、核の部分にはアドベンチャー・ゲームの要素が多く含まれているし、万人にアピールする魅力を備えている。原作の人気もその要因の一つだが、物語がメインであるという点も大きい。そこが多くの人々を引き付けたんだ。

近い将来、熱心なファンの多いアドベンチャー・シリーズが復活を果たす予定だ。Charles Cecilは、『Broken Sword』の最新作『The Serpent’s Curse』のキックスタートに成功した。Gilbert氏のシュールなマルチプレー・アドベンチャー『The Cave』もリリース間近。『Kentucky Route Zero』のエピソード1がリリースされているし、『The Walking Dead』のシーズン2も確実にスタートするはずだ。

現在のアドベンチャー・ゲームは多種多様で文学的、美しくて創意工夫に富み、野心に溢れている。ありとあらゆる芸術作品からの影響を受けており、我々に新しい物語を聞かせるために復活を遂げたのだ。これまでは、90年代前半のLucasArts最盛期がアドベンチャー・ゲームの黄金時代と呼ばれてきたが、私は今こそが黄金時代なのではないかと考えている。

[ソース: IGN]

カテゴリ: 業界
タグ: -