2013年02月18日(月)06時38分

【コラム】旧友『Silent Hill』の凋落

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ホラー・ゲームというジャンルを代表するフランチャイズでありながら、近年は低迷している『Silent Hill』シリーズへの思いを綴ったGame Informerによるコラムを。

「おい、『Silent Hill』の犬みたいな怪物だ!」1999年初頭、私は妹にこう叫んだ。2人でバス停まで歩いている時、水路の方から霧が立ち込めてきた。父親がプレーする『Silent Hill』を暗闇の中で見続けた我々は、立ち止まって霧の中に浮かぶ犬の面影に目を凝らした。その影がフェンスを飛び越えて飛び掛ってくるのでは、という気持ちもあった。世間知らずな子供だった私は、まだ『Silent Hill』に慣れきってはいなかったのだ。『Silent Hill: Downpour』と映画『Silent Hill: Revelation 3D』のリリース以来、このフランチャイズは古臭さを感じさせるようになり、長年恐怖を提供し続けてきたせいでシワだらけの顔は歪み、今では新規層にアピールするために和らいだ表情になった。

2001年9月に『Silent Hill 2』がリリースされたことで、シリーズはピークを迎えた。1作目の恐怖を更なる高みへと昇華したゲームだ。類を見ないホラー・ゲームであり、『Silent Hill』の雰囲気はサバイバル・ホラーのゲーム・デザインにおける新たな方向性を決定付けた。視界が悪い点だけでなく、通りの向こうから聞こえてくるノイズ、不気味なサウンドトラック、途切れ気味のラジオ、呪われた町特有のざらついた空虚感といった全てが斬新だった。

シリーズが進むにつれ、物語とゲームプレーは著しく劣化していった。2作目以降、少しずつ良さを失って行ったかのようだ。

2009年に『Silent Hill: Homecoming』がリリースされた時のことを、私は良く覚えている。『The Room』が大嫌いだったので、とても楽しみにしていたからだ。『Homecoming』をプレーし始めて気付いたのは、その難易度の高さだった。巨大なチャイナドールのボス・クリーチャーScarletがなかなか倒せず、私は延々とプレーし続けた。『Homecoming』に飽きたのは、物語が変だったから。Alex Shepard一家には大変な過去があったが、とにかく怖くなかったのである。『Silent Hill 2』の主人公James Sunderlandと亡き妻には遠く及ばない。

2349.jpg『Silent Hill: Homecoming』

2012年、Vatra Gamesは『Silent Hill: Downpour』をリリース。私は開発状況を逐一チェックしつつ、発売日を指折り数えて待った。ゲームをレンタルし、複雑な気持ちを抑えながら心の準備をした。「より優れた体験を実現するために『Silent Hill』に手を加えた」とはVatraの発言だが、それは『Silent Hill』を劣化させるという意味だったのだろうか?ゲームは5日でクリアできた。5日はおろか、私はそれまで『Silent Hill』を1人でクリアしたことはなかった。

私はコントローラーを手にしながらため息をついた。最初の映画版『サイレントヒル』を劇場で鑑賞した瞬間を越える、史上最悪の『Silent Hill』体験だった。水をメイン・テーマにした『Downpour』の主人公Murphy Pendletonは囚人で、移送中にバスが事故を起こしたことで、シリーズ初登場となるSilent Hillの一角に辿り着く。開発元のVatraは『Silent Hill』の売りである降りしきる灰やサイレンといった要素を排除してしまったため、『Alan Wake』に登場した山間の町と大差なくなってしまった。この町の一角はオープン・ワールドとして再現され、多種多様なクエストの可能性が開かれたが、『Downpour』のクリーチャーは創造性に欠け、人間型ばかりで退屈だった。私は興味が持てなかったが、低い難易度のお陰でプレーし続けることができた。『Silent Hill』はいつからこんなに簡単になったのか?6歳の子供ですらプレーできるような難易度じゃないと駄目だろう?と侮辱されたような気分になってしまった。『Downpour』はゴアやグロテスクな描写に頼ることはせず、精神的な恐怖に焦点を絞ろうとしているが、これは上手く行っていない。過去作が必死に構築しようと努力してきた、『Silent Hill』の顔とでも言うべきあのムードが完全に欠如しているのだ。ゲームをクリア後(2周目はゴメンだ)、私は疑ったことを恥じながら『Homecoming』へと戻っていった。『Downpour』を凝視するなど耐えられないとはいえ、私はいつか誰かが、『Silent Hill』にかつてのような栄光を取り戻してくれるはずだという希望を捨てていない。私は、スーパー・ボウルを諦めていないデトロイト・ライオンズのようなもの。「いつの日か」と私は繰り返す。「いつの日か」。

4219.jpg『Silent Hill: Downpour』

『Silent Hill』はそれまでのホラー・ゲームとは大きく異なっていた。濃い霧に覆われた街の雰囲気や貧弱なライティングが、むしろ長所になっていた。クリーチャーも唯一無二で、まるで悪夢から這い出てきたかのよう。初期作品はグラフィック的に稚拙だが、後期作品は独創性に欠け、あの特別な『Silent Hill』感覚が失われていた。(初期の)サウンドトラックから完璧なクリーチャー・デザインまで、シリーズの優れた要素を全て盛り込んだゲームこそがパーフェクトな『Silent Hill』だろう。私はそんな非の打ちどころがないゲームを待ち続けている。

『Silent Hill』と私は昔からの友人だ。今では様変わりしてしまったことに私は怒りを感じているが、同時に共に過ごした良き思い出を振り返ることもある。『Silent Hill』の名を汚した『Downpour』が大嫌いになる日もあれば、『Homecoming』でScarletボスを遂に倒すことができたときの快感を思い起こす日もある。『Silent Hill』は常に私の幼少期の一部なのだ。今後も、あらゆるホラー・ゲームを『Silent Hill』と比較し続けるだろう。

[ソース: Game Informer]

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