2013年02月26日(火)23時52分

【コラム】夢の崩壊 - 『Aliens: Colonial Marines』を巡る物語

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『Aliens: Colonial Marines』の開発経緯に関して、様々な噂や憶測が飛び交っている現状を受け、Kotakuが複数の関係者に取材を敢行。『Aliens: Colonial Marines』が道を誤ってしまった経緯が徐々に明らかとなっています。

2006年12月11日、セガは『エイリアン』フランチャイズの版権を獲得したことを発表。ファンの期待を煽るため、セガは2本の大作、ロールプレイング・ゲームと1人称シューターを開発中であると付け加えた。

その後、うち1本はキャンセルされてしまったが、もう1本もキャンセルされるべきだっただろう。

先日PCとコンソールで発売されたシューター『Aliens: Colonial Marines』は、ほぼ満場一致で駄作の烙印を押された。2週間前、我々は一体何が起きたのかを探ろうとしたが、その時は全体像は見えてこなかった。だが今回は、全体像がはっきりと見えてきた。

様々な噂を吟味し、『Colonial Marines』に何が起きたのか探ろうとする中で、私はゲームの関係者数人に話を聞くことができた。オフレコを希望する者もいれば、匿名を条件に話の内容の使用許可を与えてくれた者もいた。彼らの話を聞くうちに、『Aliens: Colonial Marines』の背後に隠された真実、機能不全の開発工程、ミスコミュニケーション、矛盾したビジョン、といった点が徐々に明確になっていった。

(残念ながら、ここ数週間ファンやプレスが説明を求めているにもかかわらず、セガとGearboxはコメントを拒否した)

版権獲得発表の僅か数日後、セガは『Brothers in Arms』や『Half-Life』の拡張パックで有名だったGearboxと共に1人称シューターを開発することを発表した。セガがその発表をした時は、まだプリプロが始まったばかりだったと複数の関係者は語っている。公開する素材が何もなかったのは、そもそもまだ何も存在していなかったからである。

一方、セガは『エイリアン』を題材にしたRPGを開発するため、独立系スタジオObsidian Entertainmentと契約を交わした。

その後の数年間、この2作品は度重なる延期を繰り返した。2009年になると、セガは財政危機に陥り、この2作品はかなりの金食い虫となっていた。とある関係者によると、セガのプロデューサーは1人称シューターとRPGのどちらかを選択しなければならなくなったという。セガはシューターを選択し、RPGをあっさりとキャンセルした。

2009年、Gearboxは予想外の高評価と商業的成功を収めた『Diablo』風シューター『Borderlands』をリリース。この突然の大成功で、Gearboxは即座に『Borderlands 2(当初のコードネームは『Willow 2』)』の開発に取り掛かったため、『Colonial Marines(コードネームは『Pecan』)』の開発の大部分をFPS『Section 8』で知られるスタジオTimeGate Studiosに外注に出すことを決めた。当時、TimeGateは続編『Section 8: Prejudice』の仕上げに入っていたところだった。

1585.jpgTimeGate Studios

2010年の11月頃、TimeGateは次のプロジェクトに関する会議を開いた。会議は上手くいった。

「プロジェクトの方向性に関して、この2チームはいい相乗効果を生んでいた」と関係者が語る。「両思いの関係だったんだ」

「TimeGateでは誰もが興奮していたよ」と別の関係者。

Gearboxはゲームの素材を送り、TimeGateの開発チームがプロジェクト『Pecan』に着手し始めたが、スタッフの何人かはGearboxが殆ど開発を進めていなかったことにショックを受けたという。

「4年分進んでいたかというと、全くそんなことはなかったね」とある関係者。

プロジェクトに近い3人の関係者によると、Gearboxは2007年から2010年までの間、『Colonial Marines』には殆ど力を入れていなかったという。Gearboxは『Duke Nukem Forever』『Borderlands』そして『Borderlands 2』に尽力することを選択。『Colonial Marines』の優先順位は低かった。

とある関係者によると、TimeGateがプロジェクトに参入した時、『Colonial Marines』はアセットの「ごた混ぜ」状態だった。『Borderlands』のシェーダーやライテング・プロセッサーまでは含まれていたという。「多くのアセットは場違いだった」と関係者。

Gearboxの仕事がどの程度TimeGateによって保持されたのかに関しては、矛盾する証言を耳にした。とある関係者はTimeGateが全てを破棄したと言い、他の関係者はTimeGateのスタッフが手元のアセットで作業を進めたと語っている。

とはいえ、誰もが口を揃えるのは、2010年末にはTimeGateが『Aliens: Colonial Marines』のデベロッパーだった、という点だ。Gearboxは全体を監督していたし、TimeGateはGearboxとセガのプロデューサーから承認を得る必要があったが、プロジェクトの大半はTimeGateが責任を負っていた。

2011年、TimeGateは幾つかの大きな問題に直面した。最初の大きな問題はゲームの物語だった。発表から4年が経過していたにもかかわらず、脚本の最終稿が決定していなかったのだ。GearboxとTimeGateのナラティブ・デザイナーは頻繁に推敲を繰り返しており、関係者が語るところによると、開発途中で物語に大きな変更が加えられたため、TimeGateはシーンやステージ全体を削除せざるを得なくなったこともあるという。

「2ヶ月ほどは、推測しながら開発を続けた」とある関係者は語る。「全体像が見えないままゲームの開発を続けるのは実に奇妙だったよ」

4188.jpgGI誌2008年3月号

『Pecan』の意思決定には3つの会社が関わっており、煩雑な手続きは避けられなかった。とある関係者によると、セガのプロデューサーは『Colonial Marines』を『Call of Duty』のようなゲームにしたがっていた。つまり、人間との銃撃戦を増やし、エイリアンとの戦いを減らすということだ。GearboxとTimeGateの上層部はこの考えに賛同せず、ゲームの方向性に関してデベロッパーとパブリッシャーの間で主導権争いが繰り広げられたのだ。

「船頭多くしてという典型だ。ゲームプレーに対して、両サイドからあまりに多くの人間がフィードバックを返してきたことが更なる延期に繋がった」と関係者。「とあるケースでは、フィードバックに遅れや矛盾があったせいで、完成までに一ヶ月掛かったこともあった」

相容れない運営スタイルという問題もあった。GearboxとTimeGateは、全く異なるアプローチを持つ全く異なるデベロッパーだったのである。

「全く正反対のワークフローを持つ2社を選ぶのは間違っている。Gearboxは何度も何度も繰り返し練り続けるスタジオだが、TimeGateは正反対で、製品を出荷することが全ての会社なんだ」

開発期間を通じて、開発チームは数多くのステージやミッションを廃棄したと関係者は言う。例えば、カットされたミッションの中には、ウェイランド・ユタニ社のスパイだったことが後に判明する科学者をエスコートするミッションが含まれていたという。「エスコート・ミッションなんて馬鹿げているという理由で削除されたんだ」と関係者。

「ゲームを出荷できる状態にするために、多くの時間を費やしたよ」とその関係者は語る。

そしてデモだ。腹を立てたジャーナリストの多くが指摘するように、Gearboxとセガは製品版とかけ離れたデモを公開し続けた。説明を要求する声が上がる中、多くはファンを騙したとしてGearboxの社長Randy Pitchford氏を糾弾した。

だが、真実はそこまで悪質ではないかも知れない。私が話を聞いた何人かの関係者によると、『Colonial Marines』のデモを製作したのはTimeGate(Gearboxがアニメーションをアシストした)で、リアルタイムで動いていたという。E3デモには付き物だが、通常のコンソール・ゲームではありえないハイエンドPCのスペック上で走らせたものだ。

「パフォーマンスのことは心配せずに、とにかく凄いのを作ってくれと何度も言われたよ」と関係者。「デモがプレーアブルじゃなかったのには理由があるんだ」。(E3 2012ではマルチプレーがプレーアブル出展されていたものの、シングルプレー・デモはプレーアブルではなかった)

デモは古いハードウェアに最適化されていなかったため、実際の製品版よりも凄い完成度を誇っていた。これらはパワフルなPCを用いて開発されていたものの、コンソール・ゲームには必ず「パフォーマンス・バジェット」と呼ばれる、Xbox 360やPS3には到達不可能な天井が存在する。『Colonial Marines』のデモはこのパフォーマンス・バジェットを大幅に超過しており、開発チームは製品版に向けて大幅な後退を余儀なくされた。

「我々はテクスチャやシェーダー、パーティクル・フィデリティをどんどん削っていった。メモリ制限にフィットさせるためにね」とある関係者。

3253.jpgE3 2012の『Aliens: Colonial Marines』ブース

2012年の中頃、Gearboxが『Borderlands 2』をほぼ完成させると、TimeGateからプロジェクトを引き継いだ。すると、Gearboxは全てを作り替えた。関係者2人によると、TimeGateが作ったゲームの出来が良くなかったことと、PS3では動かなかったことが原因だという。

「Gearboxはライテングやテクスチャ、シェーダーの複雑度に変更を加えた」と製品版はプレーしていないものの、完成間近のビルドを良く知る関係者は語る。「デザイン要素は変更されるか完全に作りかえられた。低解像度のテクスチャやパフォーマンスの高いシェーダーを除いて、TimeGateのアセットは多くがそのまま残されたようだ」

TimeGateスタッフの多くがプロジェクトから外され、解雇された例もあるという。とある関係者によると、大混乱となったプロジェクトを救う時間がないことをGearboxスタッフは分かっていたという。既に7年が経過していたため、セガにこれ以上の延期を頼むのは無理だろうと感じていたのである。

「まるで9ヶ月で作ったゲームのように感じるのは、実際に9ヶ月で作ったゲームだからさ」と関係者は語る。

では噂に関してはどうなのか?まず、GearboxとTimeGateには訴訟の噂が出始めている。Gearbox内部には、セガがこのプロジェクトを巡って訴訟を起こすのでは、と懸念する人間もいて、TimeGateも同様の噂を耳にしているという。セガ社員を名乗る匿名のブロガーは、セガに嘘を付いて契約を反故にしたとしてGearboxを糾弾しているが、裏付けは取れていない。他のブログ投稿、特にソニック殺害に関するバーベキューの場での酒を交えた会話などを見ると、このブロガーの信憑性には疑問が残る。

それらは単なる噂に過ぎない。Gearboxとセガの間で交わされた契約の詳細は不明だし、両社共に口を閉ざしている。この数週間、私はGearboxとセガの関係者に話を聞いてきたが、公の場で口を開こうという者は誰一人として存在しない。

デティールはぼんやりしたままではあるが、『Aliens: Colonial Marines』があれほどの駄作になってしまった経緯は、徐々に明確になってきた。官僚的干渉や問題を抱えた開発サイクルが、ファンにとって夢のゲームを完全な大失敗作にしてしまったということだろう。

[ソース: Kotaku]