2013年08月09日(金)05時02分

『The Last of Us』を振り返って―Naughty Dogが語る批判への意見や開発の裏側

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Naughty Dogのクリエイティブ・ディレクターNeil Druckmann氏とゲーム・ディレクターBruce Straley氏がGamesBeatの取材に応じ、発売後の『The Last of Us』に対する反応についての率直な感想を述べている。

【ネタバレ注意!!!】この記事には『The Last of Us』に関する若干のネタバレが含まれています。ご注意下さい。

Neil Druckmann: 評価の高さには驚いているよ。物語はちょっと繊細で、題材は少し大人向けだからね。ゲームプレーも難易度が高めで、我々の過去作より複雑だ。あまり売れないか、もっと賛否が別れると考えていた。でも、良い意味で驚いたよ。

Bruce Straley: ゲーム中の女性キャラクターの役割に対する幾つかの批判や反発には驚かされた。男性、女性、黒人、白人、ゲイ、ストレート――我々は力強いキャラクターを見事に作り上げたと思っている。我々は深みのあるキャラクターを作ろうとしているだけなんだ。それでも、ゲーム業界が抱える問題点への批判の道具に使われてしまった。

議論をするのは良いことだし、論点にも全て同意だ。業界内の不平不満の全てに関して、我々は議論を重ねることで、ビデオゲームという媒体へのアプローチを成熟させなければならない。ただ、我々のゲームがああいった形で利用されたのには違和感があるよ。『The Last of Us』以外にも使えるゲームが山ほどあるはずだ。

Neil Druckmann: その件について考えていたんだ。女性や他のキャラクターの良い面を指摘した記事も沢山目にしたよ。不気味の谷のように、言うなれば性差別の谷があると思う。ゲームが進歩するほど、問題点が際立つんだ。何でも批判したい人がいるのは知っているよ。

その批判とは、女性キャラクターが男性キャラクターの保護を受ける存在として描かれているとするものだが、2人は『The Last of Us』があくまでJoelとEllieの物語であるという点を強調する。

Neil Druckmann: 最初からそれを意図していたんだ。2人の主人公の物語にすることをね。2人ともに力強いストーリー・アークがある。2人それぞれに影響を及ぼす場面が用意されている。Joelだけの物語だと言っている人が多くいて、驚いたよ。EllieがSamと会話する場面などもあって、その場面はJoelには何の影響もない。純粋にEllieの成長を描くための場面なんだ。主張を通すために、ああいった場面は忘れられてしまう。

ストリーテリングが洗練されればされるほど、批判も洗練されなければならないと感じている。「死にかけている女性がいるから、女性の死がこの男の物語の推進力になるゲームなんだろう」とベタな部分を指摘するだけじゃなく、繊細な部分を分析すべきなんだ。より奥の深い議論をすべきだよ。

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ストーリーテリングの効果を増すため、発売前には特定の情報を意識的に隠したと語る両氏。

Neil Druckmann: マーケティングの観点から、我々は最初から意識していたことがある。「インタビューではこういう嘘を付くぞ」というね。「Ellieとしてプレーするか」と聞かれたら、ノーと答えるということだ。キャラクターの役割がシフトするクライマックスが訪れることは、初期段階から分かっていたにも関わらずね。

Bruce Straley: 今思うと、誰も文句を言わなかったのにはビックリだよ。「この嘘つき!」って(笑)

Neil Druckmann: 「ノー。Joelだけがプレーアブルだ」と、思いっきり嘘を付いたインタビューでも沢山あったよ。Sarahとしてプレーするプロローグについても決して口外しないという決断もした。

話さなかったことは他にもあって、それはEllieに免疫があるという点だ。その理由は、まず文脈を知らないと、ベタなお約束に聞こえてしまう。と同時に、一旦それを知ってしまうと、次は物語の展開について色々と推測されてしまう。物語の始まり方や内容についてではなく、誰もがエンディングのことばかり考えてしまうようになるんだ。その点を明かさないことで、彼らが2人で旅に出ている理由などについて推測してもらえるようになる。エンディングじゃなくね。お陰でちょっとしたサプライズにもなったよ。

Bruce Straley: それに、14歳の少女と中年男が主人公と聞いたゲーマーの頭には、エスコート・ミッションへの懸念が生まれてしまう。お守りをしなければならないというね。それはプレーヤーには人気がないんだ。PRなどを通して、我々はできるだけEllieが最初から有能なキャラクターであるという点を強調してきた。Joelの有能な相棒としてデザインされているんだ。免疫があると公言してしまうと、エスコートする必要があるんじゃないかという懸念が生まれてしまう。それは望んでいなかったんだ。

『Uncharted 2』に思い付いたゲームプレーのアイデアが、『The Last of Us』のベースになったという。

Neil Druckmann: Bruceと私が『Uncharted 2』に取り組んでいる時、ゲームプレーや物語のシナリオについて色々と議論を重ねたんだ。そこで考えたゲームプレーのシークエンスに、「聾唖の少女」と名付けたものがあった。もちろん、これは全て理論上の話だよ。Drakeが戦争で崩壊した町にいて、内戦を戦っている反乱軍に加わる。夜にみんなで寝ることになるが、その中に十代の少女がいて、聾唖なんだ。

我々はどうすればゲームプレーを通じて絆を深めることができるか考え始めたんだ。台詞に頼れないからね。夜中に彼女がDrakeを起こして、付いてくるようジェスチャーする。建物を登ったり隙間を飛び越えたりする彼女に付いていくと、彼女がワクワクしてるのが分かる。Drakeと何かを分かち合いたいと思っているんだ。Drakeが建物の屋上に登っていくと、綺麗な明かりに照らされた街の全景が目に入るんだ。遠くの方からは銃声とかが聞こえるが、このキャラクターと一緒に美しい瞬間を共有するんだ。全てゲームプレーを通してね。

次回作についての議論が始まった時にも、そのアイデアが頭の隅に残っていた。それが、深い絆で結ばれた2人の人間が持ちえる全ての側面を含んだ上で、ゲームの序盤で知り合ったキャラクターとの絆を深めていくというコンセプトを中心としたゲームは可能なのか?という疑問へと変化していったんだよ。

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好調なセールスを喜ぶDruckmann氏だが、あくまで自分がプレーしたいゲームを作った結果であるとしている。

Neil Druckmann: それは最高だが、我々チームにとっては、今後2年、3年、4年にわたってインスピレーションを掻き立ててくれるようなものが必要だ。金が儲かるだけじゃ駄目なんだ。苦労して残業してる時に、我々を掻き立ててくれるものじゃないとね。

商業的な成功のクールな面は、我々が作ったのは我々自身がプレーしたいゲームであって、これなら売れると分かって作ったゲームではないところだ。「あのアプローチは上手くいった。またトライしよう。次も、まだ存在しない自分たちがプレーしたいゲームを作ろう」という気持ちになれたよ。

それに、Ellieの人気っぷりを見れば、女性を主人公にしたゲームが売れるかどうかは明白だろう。

[ソース: GamesBeat]