2014年02月22日(土)10時42分

【コラム】Irrational Games閉鎖とKen Levine氏の決断、その真意

irratinal-games2.jpgIrrational Gamesスタジオ風景

『System Shock 2』『Freedom Force』『SWAT 4』といったコア層に高く評価されるゲームを続けてリリースし、『BioShock』『BioShock Infinite』で商業的にも大成功を収めたIrrational Games閉鎖のニュースは、ファンや関係者に衝撃を与えた。

『BioShock』をTake-Twoに預け、新たな道を選択したLevine氏の決断をGamesIndustryが掘り下げている。

Irrational Games閉鎖のニュースは、ゲーマーとゲーム業界に衝撃をもたらした。創設者のKen Levine氏が公式サイトにて閉鎖を発表、方向性の転換と、その結果によるIrrational Gamesの閉鎖を説明した。この件に対する主な反応は2種類に分かれた――『BioShock』の新作や新たなコンテンツがもう作られないのではないかという恐れと、Irrational Gamesで100名(Boston Globe紙の報道であり、Take-Twoは人数を公表していない)を越す人間が職を失ったことに対する怒りだ。一体、何が起きているのだろうか?

コメントを求められたTake-Twoは、「投稿されたKenの声明が全てです」と述べただけ。いつかKen Levine氏、そしてTake-Twoから更なる詳細を聞くことができるかもしれない。しかし、Ken Levine氏の声明に込められた多くの情報から、幾つかの結論を引き出すことができる。

(Take-Twoは後にGamesIndustry Internationalに対して「我々はKenとの長きにわたる生産的な協力関係を楽しんできたし、彼がTake-Twoと共に新たな創造活動を追及することに興奮している。このエキサイティングな新プロジェクトに対するKenのプランを鑑み、Take-Twoは残ったIrrational Gamesスタッフにできるだけ多くの社内就業機会を見つけ、退社する者には再就職支援を提供することが最善のアプローチであると決定した」との声明を発表している)

まず何よりも、裁量権と責務について明確にすることが重要だ。Irrational Gamesは、Looking Glass(訳注:『Ultima Underworld』『System Shock』『Thief』を生んだ開発スタジオ。2000年に閉鎖)の盟友Jonathan Chey氏、Robert Ferrier氏と共にKen Levine氏が1997年に設立し、2006年にTake-Twoによって買収された。それ以来、Ken Levine氏はIrrational Gamesの公の顔であり続け、スタジオを運営し続けてきたが、もう彼の会社ではなくなったのだ。あくまでTake-Twoの所有物であり、スタジオ閉鎖の決断を下す最終的な裁量権と責務はTake-Twoが負うのである。

Ken Levine氏の発言の重要な箇所に目をやれば、彼の決断は容易に理解できるはずだ――彼はデザインに長い時間を要する作品を生み出そうとしているのである。何ヶ月、もしくは何年もかけて基礎的なデザインを練り上げる場合、時が熟すまで多数のスタッフをブラブラさせておくわけにはいかない。なんら生産的な仕事を与えずに雇い続けるよりも、他で良い仕事を見つける最高のチャンスを与える方が良いはずだ。

ken-levine.jpgIrrational Gamesの創設者Ken Levine氏

Take-TwoがIrrationalのスタッフを束ねて更なる『BioShock』コンテンツを製作しない理由は定かではないが、『BioShock』フランチャイズにはDLCを沢山出せないとTake-Twoが考えているというサインなのかもしれない。新たなゲームを作ることは当然可能だろうが、Take-Twoは今のところ、そこにあまり力を入れていないように見えるのも不可思議だ。新たな『BioShock』を作る強固な根拠がないとするなら、Take-Twoには新規/既存フランチャイズを次世代コンソールで出すという仕事があるのだから、そうした優秀な人材に任せることができる他のプロジェクトがあるはずだ。優れた人材の発掘は困難であり、Take-Twoはできるだけ多くの人材を引き止めるべきだろう。彼らには当然考える時間があったはず。今回の状況に対するTake-Twoの説得力に欠ける反応は、お粗末な選択のように見える。

しかしながら、我々はTake-Twoから見てスタジオ閉鎖がいかに理に適う判断であるかを判断するに足る事実を知らない状態だ。『BioShock』に予定されているDLCの売り上げ予想がスタッフを支えることができないからなのか、それとも『BioShock』の新作が予定されていないからなのか。Levine氏と共に去る15名のスタッフの穴埋め問題もある。この15名が、最も穴を埋めるのが困難な重要な人材であるという推測は筋が通っている。彼らは当然ながら、スタジオのクリエイティビティや素晴らしい製品を生み出す能力の中心的な推進力だったはずだし、ゲーム・スタジオの心臓移植が成功する例は極めて少ない。Irrational Gamesが彼らの穴を埋め、優れたスタジオであり続けることは無理だとTake-Twoが考えている可能性もあるだろう。

どうやらLevine氏は、Take-Twoの元を去って新たなスタジオを興そうと考えていたようだが、内部に新たな会社を設立するようTake-Twoが彼を説得したようだ。新たなスタジオが何故必要なのか?何しろ、Levine氏は困難な問題――極めてリプレー性が高い、コア・ゲーマー向けの物語主導型ゲーム――に取り組むことになるが、それが大ヒットに繋がるとは限らないのである。ゼロからゲームを作り上げる場合、数年はかかるかもしれない。「デジタル配信にのみ焦点を絞る」という発言が明白なヒントになっているとはいえ、Levine氏がどのプラットフォームに狙いを定めているのかも判明していない。PC、コンソール、モバイルのどれになるにせよ、デジタルのみということはつまり、より迅速にゲームに変更を加えることが可能ということだ。コンテンツの配信も迅速にできるし、消費者の反応を受けてデザインを変えることもできる。これを実現するには、Levine氏には全く異なる組織構造を持つ会社が必要となる。ディスク・ベースのコンソール・コンテンツを作る目的で構成されたスタッフの中に、そうしたスキルを有する人材がいない可能性もある。

irratinal-games1.jpgIrrational Gamesスタジオ風景

Irrational Gamesの殆どのスタッフ無しで新たなスタートを切るというLevine氏の決断は、彼の目標を考えれば理に適っている。同じようなゲームを乱発し続けるのではなく、自らのミューズに従うしかない人物だ。人が職を失うところを見るのが好きな人間などいないが、その過程が極めて重要な意味を持つだろう。Levine氏とTake-Twoがスタッフをスムーズに移行させることができれば、それはそのまま彼らの信望に反映される。Levine氏の今回の声明やTwitter上での発言を読む限り、彼は全員に職を見つけようと最善を尽くしているようだ。

Take-Twoには、そうしたスタッフたちに他のスタジオの椅子を用意するだけの能力があるように見える。新規IPの立ち上げや既存タイトルの次世代コンソールへの移行を狙っているのなら尚更だ。『GTA V』で儲けた大金があれば、残ったスタッフを中心とする新たなスタジオを立ち上げ、仕事を回すこともできるはずだろう。Take-TwoがIrrationalスタッフの運命について表立ったコメントを発表しないのは、少なくともPR的に良くはない。長期的に見て、ゲーム会社にとって最も価値ある投資は、その腕を実証済みの質の高い社員であり、Take-Twoは決して彼らを逃すべきではない。

Irrational Gamesの大半をTake-Twoに残し、Levine氏は新たなスタジオとゲームを生み出すことになる。Irrational Gamesの面々には、Take-Twoや他の会社で良い職を勝ち取ることができる時間的余裕が与えられることを願いたい。可能な限りの誠意を持ってこの件に対処することの長期的恩恵に、Levine氏とTake-Twoは気付くべきである。

[ソース: GamesIndustry]

カテゴリ: 業界 タグ: Ken Levine