2014年05月07日(水)00時35分

『Amnesia』開発元が分析するホラー・ゲームの問題点

『Penumbra』や『Amnesia』といったホラー・ゲームで一躍その名を知らしめ、現在はSFホラー『SOMA』を開発中のFrictional Gamesのクリエイティブ・ディレクターThomas Grip氏が、ホラー・ゲームに付き物の2つの問題点について公式ブログで語っている。

IGNは先月、スタッフ数名が『Alien: Isolation』をプレーした時の反応を収録した映像(上)を公開したが、これを見たGrip氏は、この映像にはホラー・ゲームの抱える問題点が凝縮されていると考えたという。これらの問題点はあくまで自身の過去作を含むホラー・ゲーム全般に共通するものであり、『Alien: Isolation』固有のものではないと前置きした上で、Grip氏は次のような問題点を挙げている。

安堵と反復を意味する死

まず、Grip氏はホラー・ゲームにおける死の扱いには大きな問題があると指摘する。

Thomas Grip: 映像を見れば分かるとおり、死んだ時にプレーヤーはパニくったりしていない。笑って安堵しているんだ。死ぬ場面にインタラクティブ性がないので、それが余計に傍観者気分を助長してしまう。

つまり、死が訪れると、恐怖や未知の感覚が失われてしまうということだ。プレーヤーは敵対者の正体を知り、緊張感のある恐怖が「このゲームプレー・セクションをクリアしなければ」という気持ちに変わってしまう。

Frictional Gamesが手掛けた『Penumbra Overture』でも同様の問題に直面したとGrip氏は語り、同じ場面で何度も死んでしまうと、恐怖感がストレスに変わってしまうのだという。そして、Grip氏が考える解決策は、死をできるだけ先延ばしにすることだ。

Thomas Grip: 唯一の適切な解決策は、死を先延ばしにすることだ。『Outlast』では、モンスターがプレーヤーを放り投げることで、プレーヤーに逃げるチャンスを与えていた。あの物語内で上手く機能するメカニックだ。『Daylight』では、画面上でダメージが蓄積していくので、逃げる余裕ができる。この2つは、恐怖感を長持ちさせる最高の方法だよ。しかし、何らかの死は遅かれ早かれ訪れなければならない。さもないと、プレーヤーはすぐにモンスターが無害であると気付いてしまう――これはマズイ状況だ。死が訪れた時、この単調さを排除することが重要だと私は考えている。例えば、『Amnesia』ではプレーヤーが死ぬたびにマップの構造を少し変化させた(それがさらなる恐怖を生むこともあった)。

もう一つの解決策として、Grip氏は「死よりも恐ろしい何か」を用意することを挙げ、自身の最新作『SOMA』ではその試みに挑戦しているとのことだが、その詳細は明らかにしていない。

このような場面で開発者が選択できるのは「反復」「分岐」「該当セクションのスキップ」の3つだけだが、どれを選択するにせよ、不可欠なのはプレーヤーの没入感を維持し続けることだとGrip氏は結論付ける。

モンスターの露出で恐怖に慣れてしまう

続いてGrip氏は、モンスターがプレーヤーの目に触れる時間が長くなればなるほど、恐怖は薄れてしまうという問題点を指摘。特に主人公が武器を持たないゲームの場合、身を隠したままモンスターの挙動を観察する場面が増え、その結果プレーヤーはそのモンスターに慣れてしまい、最悪の場合はAIのバグや不自然なアニメーションに気付いてしまうという。

Thomas Grip: これは深刻な問題だ。名作と言われるホラー小説や映画の大半に顕著なように、最も効果的な恐怖は目に見えないものだというのは周知の事実だろう。ゲームで優れた恐怖を達成したければ、開発者はこのことを忘れてはいけないし、モンスターを露出させるタイミングには慎重になる必要があるだろう。とはいえ、ゲームでなら多少は許されると私は考える。なぜなら、プレーヤーは単なる受身の傍観者ではなく、自らの行動で結果を左右する立場にあるからだ。お陰で、モンスターをより深刻に受け止め易い状態にある。

カットシーンでモンスターを見せてしまうのも大きな問題だとGrip氏は語る。プレーヤーが操作できない受身の状態でモンスターを見せてしまうと、プレーヤーはそのモンスターを細部まで観察できてしまうだけでなく、ホラーにおいて最も効果的な恐怖演出からインタラクティブ性を奪ってしまうことになると指摘。モンスターが正体を現す場面はあらゆるホラーのハイライトであり、そこを非インタラクティブにしてしまうのは実に勿体無いとGrip氏は考えているが、その解決策は単純なようでいて極めて困難なようだ。

Thomas Grip: 最高の解決策は実にシンプル――モンスターとの遭遇を最低限に抑えることだ。そもそもの根本的な問題は、核となるゲームプレーとして「モンスターがプレーヤーを狩る」部分に依存しすぎることにある。これは、ホラー・ゲームにおける更に大きな問題点を露呈する。ゲームの大半がモンスターによるプレーヤー狩りでないなら、何でプレー時間を埋めれば良いのか?この記事で挙げた問題点よりも解決が困難だろう。

『SOMA』では、幾つかのトリックを使ってこの問題を解決しようとしている。まず、全てのモンスターを物語に関連させている。モンスターについて知れば知るほど、物語への理解度も深まっていく。それにより、モンスターの痕跡を探す作業が(モンスター自体が物語的にそれほど面白味がないゲームと比較して)より面白いアクティビティとなり、遭遇場面も減らすことができる。

次に、ゲームを通してモンスターの種類を増やして新鮮さを保つことだ。最後に、全てのモンスターを「死よりも恐ろしい」メカニックと関連付けること。これにより、モンスターとの遭遇が「捕まったら死ぬ場面になるだけ」という単純なものではなく、より不快なものになる。

最後にGrip氏は、今回取り上げた問題点は決して『Alien: Isolation』固有のものではないと改めて強調した上で、極めて非大作的なアプローチのホラー・ゲームが大手パブリッシャーから登場したことを賞賛して締めくくっている。

[ソース: Polygon]