2014年09月03日(水)07時24分

複数の開発者が明かす、ゲーム早期発表のメリットとデメリット

ゲームの発表から発売まで1年から2年、時にはそれ以上待たされることも珍しくなくなってきた昨今、早い段階でゲームを発表するメリット/デメリットには、一体どんなものがあるのだろうか。複数の開発者が事情を明かしている。

昨年7月まで北米カプコンで取締役を務めたChristian Svensson氏によると、現在のような早期発表の傾向が現れ始めたのは、PS3/Xbox 360時代の到来と同時期だという。

Christian Svensson
PS2の頃は、例えば秋にゲームを発売する場合、大抵はその年のE3で発表していた。それは全てが予定通り進んだ場合の話だよ。E3で2度見かけたら開発に問題がある、というジョークを何度も耳にしたものだ。

Xbox 360とPS3の登場を境に、投資リスクが急激な上昇を見せたので、あらゆる手段を講じて認知度を上げる必要に迫られるようになったんだ。早い段階から宣伝の流れを作らなければならなくなったし、最終的に予約数を伸ばすという目的で、より多くのショーに出展してハンズオンの機会を増やし、メディアへの露出を増やすことが必須になっていった。誰もが発売初日の顧客を確保しようと必死になっていたよ。それが、発売まで18ヶ月か2年も前の段階で発表せざるをえないという異常な状態に繋がったんだ。

svensson.jpgChristian Svensson氏

予約数を伸ばすことだけが早期発表の理由ではない。Svensson氏によると、情報漏えいを防ぐ効果もあるという。

Christian Svensson
先に発表してしまえば、少なくとも情報を管理することができる。情報が漏れる心配をせず、早い段階からパートナーとの準備を済ませることができるんだ。

『Deus Ex』の生みの親として有名なクリエーターWarren Spector氏は、早い段階で発表するのは諸刃の剣だとしながらも、ユーザーの意見を反映させ易くなるという利点を指摘する。

Warren Spector
早い段階からゲームの話をするというのは諸刃の剣だ。それは間違いない。一方で、「約束」されながら、最終的には実装されなかったフィーチャーに対する非現実的な期待を生むことに繋がってしまうんだ。大衆の要求がチームのプレッシャーになるという側面も確実に存在する。その反面、進行中のプロジェクトに対する大衆の興奮を目にすることで、チームにエンジンがかかることも多々ある。自分の作品に対して興奮してくれている人々がいるというのは嬉しいものだよ。それに、早期発表は大衆の意見を判断する助けにもなる。望まれていないフィーチャーを削除するのに役立ったり、より力を入れるべき箇所が明確になったりね。早期発表はどちらにも転がるんだ。

一方、Ninja Theoryの製品開発マネージャーDominic Matthews氏は、ゲームのイメージが固定されてしまうとして早期発表には反対の姿勢を取っている。

Dominic Matthews
あまり早い段階で発表してしまうことのリスクは、第一印象を変えるのは極めて困難だということだ。まだ開発の初期段階だとか、完成には程遠いとか、開発中だといくら念を押しても、プレーヤーは当然ながら耳を貸さない。彼らは目の前にある物を見て、完成したゲームの見本として受け止める。個人的には、私が関わったゲームはすべて秘密裏に進めたいよ。

とはいえ、開発者自身にとっては自分の仕事を明らかにできるというメリットもあるとMatthews氏。

Dominic Matthews
自分たちの仕事をスタジオ外部とシェアできるというのは、デベロッパーにとってポジティブなことだ。ゲームを発表することで、開発チームの面々は自分たちの仕事振りを家族や友達、業界の同僚と分かち合うことができる。「すごいクールなゲームに関わっているが、話せないんだ」と言わなければならないのは、とてもストレスが溜まるものなんだ。

randy-pitchford.jpgGearbox Software社長Randy Pitchford氏

Gearbox Software社長Randy Pitchford氏は、新たな開発者をプロジェクトに引き入れる際にプラスになるとして、早期発表に肯定的だ。

Randy Pitchford
単に将来の顧客を引きつけるというだけではなく、業界自体に作品の存在を知らせるという意味合いもあるんだ。開発中のプロジェクトが公になっている場合、秘密裏に事を進めている場合よりもビジネス・パートナーの誘致といった活動がはるかにやり易くなるんだよ。

Svensson氏も同意する。

Christian Svensson
ある程度のアセットを作った時点でどんなゲームになるか明確だと考えてしまいがちだが、それでもまだ極めて重要な役割を埋めたり、単純に頭数を揃える必要があるんだ。このスタジオがあのフランチャイズを手掛けているということが周知の事実ならば、「君に参加して欲しいが、何を手掛けているかは話せない」というよりも、勧誘がはるかに楽になる。

更に、発表してしまえば開発が中止されるリスクが低くなるというメリットもあるという。

Christian Svensson
人々が忘れがちなのは、開発中のゲームが全て出荷されるわけではないという点だ。早い段階で発表することを好むチームが多いのは、発表済みのゲームをキャンセルするのは難しくなるし、会社的にもマイナスだからなんだ。会社の管理能力に疑問符が付いてしまう。

一旦ゲームが発表されると、開発チームにかかるプレッシャーも跳ね上がるが、それは必ずしもマイナスではないとPitchford氏は語る。

Randy Pitchford
開発過程において、プレッシャーはプラスに働くことがある。優れた作り手というのは、人々を楽しませるために存在するんだ。締め切りが来たら終わりだということが分かっているから、それまで狂ったように全力を尽くすんだよ。

私の経験では、そのようなマジックの多くは、一種のプレッシャーに適応しようとする結果生まれるものだ。強制的なプレッシャーが、ゲームをより優れたものにするだけでなく、出荷可能に仕上げてくれることが多い。つまり、プレッシャーはストレスが溜まるものだが、開発の視点から見るとプラス面も存在するということだ。

唯一のネガティブな結果というのは、期待管理にまつわるものだと考えていて、そこにこそ優れたパブリッシャーの存在価値がある。優れたパブリッシャーは、顧客からの期待を肯定的に管理しつつ、開発中のプロジェクトや宣伝段階を広げていく術を心得ている。そうすることで、プロジェクトから最高の結果を引き出すんだよ。

では、大金を投じた大作ゲームの場合、いつ頃発表するのが適切なのだろうか?

Christian Svensson
何が適切かは、製品によって変わってくるだろうと思う。小売店での爆発的なセールスを狙う新規IPの巨大なトリプルAゲームの場合は、やはり1年以上の宣伝期間が正当化されるだろう。そのようなゲームでも、18ヶ月を超えた場合は収穫逓減が発生する。ユーザーというのは移り気なものだから、注目度を高いレベルに維持することは困難だ。この業界はその期間に関して少し一線を越えてしまったと思うし、その辺の経済も変化しつつあると考えている。

Pitchford氏も、新規IPの場合はある程度の宣伝期間が不可欠だと考えている。

Randy Pitchford
発表までの長期間に亘って沈黙を貫いたゲームから、あまりに早い段階で公式に発表したゲームまで、私は様々なゲームに関わってきた。どちらのアプローチも機能するとは思うが、同時にどちらにも困難な面が存在する。どちらを選ぶかはゲームによるよ。独創的なゲームであるほど、周知するための時間が必要になってくるし、大規模な宣伝を展開するまでに伝達方法を習得する余裕ができる。

早期宣伝キャンペーンの価値の一つは、より幅広い客層に対する宣伝方法を学べる点にある。宣伝キャンペーンを最初から最後まで目を通すと、ロゴのデザインから宣伝文句、ジャケットのデザインやキーとなるアート・コンテンツに至るまで、全てが進化していくのに気付くだろう。これには、慎重なテストと反復作業を通じて宣伝チームが実際に売り方を学んでいることが、顕著に表れているんだよ。

Ninja TheoryのMatthews氏は、デジタル配信の一般化によって、そうした事情にも変化が訪れるだろうと語る。

Dominic Matthews
デジタル・ゲーミングへの移行は、発表からリリースまでのスパンを短縮すると考えている。パッケージ・モデルと比べて、デジタルの場合は予約数を伸ばさなければいけないというプレッシャーが存在しないんだ。

しかしながら、デジタル配信の一般化と同時に台頭した自社販売の場合は、早期発表の恩恵は大きいとMatthews氏。

Dominic Matthews
通常は、素晴らしい予告編や強固なゲームプレー・デモなど、より良い第一印象を残すための最高のアセットを準備できるまで、発表は控えるべきだと私は考えている。とはいえ、我々は最新作『Hellblade』を開発初期の段階で発表した。言い換えれば、極めて早い段階で発表したということだ。その理由は、今回は自社販売になるので、開発過程を公開することでコミュニティを構築したかったからなんだ。今発表すれば、初期の段階から開発過程をシェアできる。発表を遅らせてしまうと、開発を回顧する形になってしまい、ライブ感が失われてしまうんだ。このようなアプローチや、クライドファンディングでの資金調達、もしくはSteam Greenlightが要因で、多くのゲームが早い段階に発表される結果に繋がっているんだ。

hellblade.jpgNinja Theoryの最新作『Hellblade』

そうした様々な事情がありながらも、Svensson氏は発表から発売までのスパンは今後短縮していくだろうと見ている。

Christian Svensson
デジタルの売上シェアは上昇中だし、成功させるためには必ずしもロンチまでの盛り上げが必要というわけではなくなったという意味で、予約数促進の必要性も薄れている。発売後も開発チームが現在進行形でコンテンツを作り続ける場合は尚更だ。箱に全て詰め込んで出荷すべし、というメンタリティはもう存在しないんだ。最低限の製品を出荷して、発売後もサポートを続けるという形に移行している。宣伝するに値する製品になったと感じるまでマーケティングを拡大しないこともあるくらいだ。

早い段階で発表しなければ、という業界全体に蔓延するプレッシャーは、デジタルの台頭やサービスとしてのゲームの採用で、ある程度減っていくと考えている。率直に言って、1本のゲームに18ヶ月から2年間に亘るマーケティング・キャンペーンを張るというのは、非常に金がかかるんだ。非常に困難なことだし、全てのゲームがそこまで長持ちするほどのコンテンツを備えているわけでもない。沈黙してしまうと忘れられてしまうので、発表から発売まで一貫性のある流れが不可欠だ。でないと、早期発表の意味がないだろう?恩恵を失ってしまう。そのような流れを支えるだけのアセットを作らなければならないというのは開発チームにとって厳しいことだし、長丁場になるので宣伝チームにも辛い作業になってしまうんだ。

デジタル配信される小規模なゲームの場合は、3ヶ月以上前に発表するのは理に適っていないとSvensson氏は考えている。

Christian Svensson
デジタル製品を手掛けて学んだのは、認知度を上げるために3ヶ月以上前に発表するのはあまり意味がないということだ。デジタル・タイトルの多くは小規模なゲームだし、半年から9ヶ月の宣伝キャンペーンを必要とするほどのフィーチャーもない。的を絞ったゲームなんだ。タッチのレベルが短期間で非常に高いため、ビジネスがそちらに戻ることを望んでいる。

99年や2000年頃の、半年から9ヶ月という長さに再び正常化されることが多くなるだろうと考えている。それが悪いことだとは思わないよ。

ソース: Games Industry

カテゴリ: 業界 タグ: -

最新記事