トップ
2009年07月02日 (木) 【PS3, Xbox360】

ネットワーク時代のゲーム・デザイン

Xbox Liveを筆頭としたネットワークの普及により、ゲーム業界は急速に変貌を遂げつつありますが、これがゲーム・デザインに及ぼす影響についてIGNがコラムを掲載しています。

長年に渡り、ゲーマーたちは数百万の孤立した島々として存在してきた。近所の子供たちは1台のファミコンに集まって、順番にSuper Mario Brothersをプレーした。大人のゲーマーたちは、地元のアーケードに集合して最新の筐体にコインを注ぎ込んだ。中には、当時出始めだったインターネットを利用して、似た趣味の人間を探そうとした者もいるかもしれない。ゲームは常に社会現象であり続けてきたが、ゲーマーとゲーム・デザイナーの間の真の関わりは、売り上げの時点でのみ発生するものだった。アーケード・ゲームが儲かったなら、デザイナーたちは自分の仕事が上手く行ったと知る。最新のカートリッジやCDロムが飛ぶように売れたなら、開発チームはより多額の開発資金を得る事になる。

ゆったりとしたフィードバックのプロセスだが、これはここ数年で劇的に変化した。Xbox Live、Steam、PSN、World of Warcraftといったネットワークのお陰で、100万の孤立した島々が、幾つかの大陸になったのだ。シングル・プレーのゲームをプレーしている時でさえ、我々はほぼ常時ネットワークに繋がっている。これが、ゲームの作り手に、ユーザーと繋がり、そこから学ぶ新しいパワフルな方法を提供する事となった。

コンピューター・ネットワークのパワーは、まだ活用され始めたばかり。Xbox LiveやSteamの実績やPSNのトロフィーは、殆どのゲーマーにとっては楽しい気晴らしに過ぎないが、パブリッシャーにとっては膨大なデータの源だ。こうした実績によって、プレーヤーがゲームをクリアするのに費やした時間が分かるし、諦めるまでの時間も分かる。どのサイド・クエストを一番楽しんだか、どのモードが無視され、どのモードが人気か。作り手がこうした情報を手に入れるというのは、数年前には考えられなかった事だ。

どの実績がいつ解除されたか、というのはほんの始まりに過ぎない。Bungieは、プレーヤー同士の戦闘がどこで発生しているかというデータを収集している。この情報はヒート・マップとして一般公開されているが、この情報が将来のマルチプレー・マップをデザインする際に活用されている事は想像に難くない。Valveも同様で、収集したスタッツを用いてTeam Fortress 2のバランス調整などを行っている事は良く知られている。そして、Team Fortress 2におけるプレーヤーの振る舞いに関する全ての情報は、Valveが次のクラス・ベースのシューターを開発する際に活用されるのだ。

これはシングルプレーのゲームでも同様である。Xbox Liveが提供するデータを作り手が始めて目にした時、彼らは驚くべき事実に直面した。実際にゲームをクリアした人数は極めて少なかったのだ。ここ数年多くのデベロッパーから聞いたところによると、こうしたデータを基に、優れたセーブ・メカニックや罰則の少ないデザインを通して、ゲームをより手軽するようにしているのだという。BioShockのVita ChamberやPrince of PersiaのElikaがその好例だ。BioShockにおける手軽なリスポーン・システムのお陰で、クリア率は極めて高くなったという。

最終的にゲームの作り手たちは、プレーヤーが各ステージでどこに足を運んだか、どの武器やパワー・アップが気に入ったか、といった情報を追跡している。数百万というプレーヤーの行動が、混乱やストレスの少ないミッション・デザインを可能にし、プレーヤーがゲームをプレーし続けられるようにしているのだ。こうしたデータのお陰で、デザイナーたちはゲーマーがプレーするのを止めた場所と理由を特定し、次回作で改善する事が出来るようになった。ネットワークによって、ゲームをプレーする事自体が終わりのない調査になったのだ。かつては遅く辛いプロセスだったフィードバック収集が、オンデマンドで絶え間ないデータの流れへと急速に成長しつつある。

こうしたデータは、特定のゲームにおけるプレーヤーの行動に留まらない。ネットワークのお陰で、Microsoftはプレーヤーの住所やゲームの好み、ゲームの腕前、どんなプレーヤーとのプレーを好むのか、といった情報を収集する事が出来るようになった。映画の好みやゲームのアド・オンを購入する頻度、さらにはアバターの服装を基に個人のセンスまで分かるのだ。こうした情報の全てから、どの層がどの製品を好むのか、知る事が出来る。

多くのコア・ゲーマーたちは、こうした「ぬるいゲーム」を、誤ったマーケティングがアーティスティックなデザインに割って入った結果と見るかもしれないが、パブリッシャーを責めるのは難しいだろう。このデータを分析する事で、彼らは市場が求めるゲームを提供しているだけなのだ。だが光明もある。前述したように、こうした膨大なデータはゲーム中の行動以上のものをパブリッシャーに提供してくれる。芸術性の高いゲームを愛するニッチ市場を定義するのにも役立つし、その価値を証明してくれる事に繋がるのだ。予算の大きい大作は金を追い続け、それが手軽なゲームに繋がっていくが、市場が拡大する事によって、より少ない予算のニッチ・タイトルが存在しうるスペースも生まれる事になる。デジタル・ダウンロード・サービスは、こうした予算の少ないハイ・コンセプトのゲームの価値を証明する事になるだろう。こうしたゲームも、ニッチ市場が何を求めているのかをより深く理解する事で恩恵を受ける事になるのだ。

勿論、こうしたデータ分析は、より良いゲーム開発に使用されるだけではない。プレーヤーの行動から収集されるデータ量は膨大で、賢い商売人ならばこれを金に換える方法を考えるだろう。ビデオゲームにおける広告はまだ初期段階だが、最終的には最も効果的な広告の一つとなるだろう。

これまでの広告では不可能だったフィードバックが、ビデオゲームでは可能になるのだ。1人称のカメラがどれくらいの頻度でどこを向くかによって、どの広告がプレーヤーの注意を引き付けたか、といったデータを収集する事が可能なのだ。Project Natalが発売されれば、プレーヤーが広告を見る際にどこに視線を合わせたか、文字通り追跡する事が可能になる。だがMicrosoftはそれまで手をこまねいているつもりはないようで、先日XboxLiveにインタラクティブ広告を導入すると発表している。

こうしたデータを、その人物の住んでいる地域、ゲームの好み、腕前といった情報と合わせる事で、完璧な広告を表示する事が出来るようになる。例えば、RPG好きのハードコア・ゲーマーを対象としたダウンロード拡張パックの宣伝の場合、三角の青い広告の方が緑の丸い広告よりも効果があるかもしれない。広告代理店がそうした情報を手に入れる日は、そう遠くないだろう。これまで宣伝費の多くが費やされてきた看板などでは、こうしたフィードバックなどは一切得られない。データ収穫の始まりだ。

ゲーム発売後の収益の流れがより重要になるにつれ、最も効果的なゲームのアド・オンの販売方法を模索するレースが始まっている。Valveは定期的にデータを収集し、どのセール、価格帯、プロモーションが最も効果があるかをテストしている。各社の宣伝マネージャーたちはユーザーに金を使わせる最高の方法を模索しているのだから、他社がValeを追随するのは時間の問題だろう。MMOのデザイナーたちは、街のどの部分にプレーヤーが集まるのかを分析し、有料のアップグレード・アイテムを販売する店がプレーヤーに良く見えるよう、街並みのレイアウトを考え出すのだ。インターフェースのデザイナーたちは、メニュー画面を行き来するプレーヤーの行動を分析し、最新のマップ・パックが発売されている事をプレーヤーに直接知らせる方法を生み出していく。

こうしたアイディアに恐怖を感じるか、興奮するかはもはや無関係。経済がパブリッシャーに要求しているのだ。でないと、状況に適応出来なかった者として歴史の狭間に消えて行く事となる。知識はパワーであり、ビデオゲームのような数十億ドル規模の業界において、そのパワーは急速に大金を、そして願わくばより優れたゲームを生む事になるのである。

[ソース: IGN]





最新記事


【デジタル販売】 北米Xbox Live Points (1600point) Play-Asia.comにて