2009年11月23日(月)00時10分

【コラム】Uncharted 2: Among Thievesに見るゲームの進化

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このホリデーシーズンに発売された数々の大作の中でも、最も高い評価を受けているUncharted 2: Among Thieves。この作品がゲーム業界にもたらしたものとは何なのか。IGNが詳しく分析しています。

ピクセル化されたヒゲと256色のカラー・パレットの時代は終わった。現在のビデオゲーム業界は成長し、遂にハリウッドに匹敵する技術と芸術性を身に付けたのだ。映画監督のジェームズ・キャメロンは、5億ドルをかけたSF大作「アバター」に登場する、感情豊かなエイリアンと生い茂る風景を作り出すため、数百名のスタッフを抱える特殊効果会社Weta Digitalに頼った。1500万から2000万ドルの予算を手に出来るゲームの作り手たちも、時に驚くほどリアルに仕上がる作品を見て分かるように、同じくらい才能豊かなアーティストやプログラマーからなる開発チームを抱えている。

だが、大作映画のような体験をビデオゲームで再現するために大金を注ぎ込んでも、大抵はそうした体験のハートを再現出来ずに終わる。最後の大爆発と共にエンド・クレジットが流れ出した時、観客は「インディ・ジョーンズ」の爆発に拍手するのではなく、愛すべきインディのキャラクターと、魅力的な物語(オーケー、確かに4作目は違うかもしれないが、言いたい事は分かってもらえるだろう)に拍手を贈るのだ。

変化し成長する強烈なキャラクター。惹き込まれるようなストーリーテリング。映画に不可欠なそうした要素は、ビデオゲームでは大抵の場合ポリゴン数やテクスチャ・エフェクトなどによって、隅に追いやられてしまう。だが、今年最大の作品の一つである本作が未来を示しているならば、そうした風潮も変わるかもしれない。

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Naughty DogによるUncharted 2のヒーローであるNathan Drakeは、Biohazardシリーズ全体を通してのLeon S. Kennedyよりも、遥かに現実的で、チャーミングで、好感が持てて、人間的である。カプコンのサバイバル・ホラー・シリーズは、グラフィック技術と空気感においては、常に業界の最先端にある。だが、このシリーズのストーリーテリングは史上最も出来が悪いゲームの一つであり、ストーリーテリングは痛々しいほどに貧弱で、深みの無いヒーローが最悪の台詞を吐き続けてきた。

Biohazardのようなシリーズは、ゲームプレーとストーリーテリングを分断してきた壁をなくす事に成功したUncharted 2から学ぶ事が多々あるだろう。Drakeが走り、クライミングし、銃を撃ちながら美しいジャングルや雪山を駆け巡って財宝を捜し求めている時、殆どのゲームでは滅多に繋がる事のないゲームプレーとストーリーテリングがシームレスに融合し、映画的な結果を生み出している。

Uncharted 2は、マルコ・ポーロの失われた艦隊を求めて世界中を飛び回るトレジャー・ハンター、Nathan Drakeの物語。彼はハンサムでカリスマ性と知性を兼ね備えたヒーローだが、ヤバい盗賊どもと手を組んでいる事からも明らかなように、常に正しい決断を下すとは限らない。トレジャーを捜し求めていない時、彼は間一髪危機から逃れているか、敵と銃撃戦に興じている。一部のディテールにはオリジナリティがあるが、こうした設定の殆どは、「インディ・ジョーンズ」から「トレジャー・ハンター」に至るまで、ハリウッド映画のお約束でもある。Uncharted 2の根本は、アクション映画のビデオゲーム版なのだ。

Uncharted 2開発の過程やDrakeというキャラクターの肉付けに関してより深く知るため、我々はNaughty DogのEvan Wells氏に話を聞いた。マトモなストーリーテリングやキャラクターを含んだストーリー主導型ゲームは殆どないが、その理由を彼に尋ねたところ、テレビ・ドラマや映画の方法論を研究し採用する、スタジオの熱意に集約される、と答えてくれた。

Evan Wells: キーとなるのは、突き詰めていけば、全てはキャラクターだと心の底から思っている。物語を語る際、それがキャラクター主導型のプロットでなければ、何か欠けているという事なんだ。Uncharted 2の何が新鮮でエキサイティングなのかといえば、それはキャラクターであり、そのやり取りが面白いんだ。

だがそのためには、最高の演技と相性の良さが求められる。Drakeと旧友Sullyが共に傭兵たちと戦いながらジャングルを進んでいく時、彼らは言葉やジョークを交わし、提案をし、親友のように感じられる。彼らの間には歴史があると信じられるのだ。一方、DrakeのガールフレンドであるChloeがElenaと対面した時、台詞だけではなく、全体のトーンにも、2人の間の緊張感を感じ取る事が出来るのだ。

こうしたニュアンスは、ビデオゲームにおいては無視されてしまう事が殆どだ。こうしたディテール、些細な事柄こそ、ヒーローや悪役に命を吹き込み、リアルにしてくれるのだから、無視されてしまうのは非常に残念な事である。

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任天堂は常々、ゲームプレーこそがキングであると主張し、長年に渡って身を持って証明してきた。SDのゲーム機やストーリー要素のないWii Sports Resortなど、そこにストーリーテリングやハリウッド的な演出など必要ではない。そして、それは正しい。ここで、純粋なゲームを思い浮かべて欲しい。Tetrisは、20年前に世に出た当時と同じくらい現在にも通用している。我々がTetrisに期待するものは何も変わらない。美しいグラフィックも、ヒネリのあるストーリーも必要とされず、プレーしていて楽しければ、それが全てなのだ。同じように、Wii Sportsのキャラクターに関節がなかろうと、単なるゲームなのだから問題ではないのだ。

だが、ストーリーテリングと現実的なキャラクターや世界観に頼った体験を作り出そうとした時、デベロッパーは知らずの内に落とし穴にハマってしまう。突如として、そうしたゲームはただのゲームではなくなり、外部からの影響や比較に無防備に晒される事となる。我々自身がそう認識していなくても、自然とある程度は映画に匹敵するような品質を求めるようになり、ストーリーテリングやキャラクター造形に関してハリウッド映画スタジオほどの経験も予算も持ち合わせていないゲーム開発会社は、苦戦を強いられる事となるのだ。だがNaughty Dogはその挑戦に挑み、結果は見ての通りだ。

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Naughty Dogは、Uncharted 2で各キャラクターを演じる俳優たちと、1年以上に渡って月に2、3度は仕事をしてきた。レコーディング・セッションだけではなく、録音作業をしているか否かに関わらず時給でギャラが支払われるゲーム業界では珍しい、本読みも行った。勿論、予算はハリウッドには遠く及ばない。

多くのデベロッパーは、まず先にキャラクターの台詞を録音し、その後でモーション・キャプチャーの俳優を雇って、台詞に合わせてパントマイムさせる手法を取っている。Naughty Dogはそれとは対照的に、まるで演劇やテレビ・ドラマ、映画のようなアプローチをUncharted 2で採用し、俳優に全てをやらせたのだ。複数の俳優に、同時に演技をさせたわけだ。

Evan Wells: Nolan Northが主役に決まってからは、常に他の俳優を相手に脚本を読んでもらった。伝統的なやり方で演じる事が出来るからね。演技を引き出すためには、これが本当に重要だったんだ。

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1作目のUnchartedでNaughty Dogは、モーションキャプチャー・ステージを使用して、俳優に動きと台詞を同時に演技してもらい、そのデータを使ってゲーム中のキャラクターのアニメーションを作成していったが、倉庫の雑音のせいで台詞が使用出来ず、後にスタジオで台詞だけ再録音する羽目になった。ご存知の通り、それはそれで上手く行ったが、彼らは今回その方法論を洗練させ、ハリウッド・モデルにより近いものとなった。

Evan Wells: ステージ上での演技をそのままゲームに取り入れるから、本当にドラマや映画の撮影と殆ど変わらなかったんだ。

Uncharted 2は、脚本、モーション・キャプチャー、顔のアニメーション、リップ・シンクが、全て完璧に融合している。もし何か一つ、例えばリップ・シンクを犠牲にしていたら、全てが成り立たない。ゲームをプレー中、探索中や敵との戦闘中にDrakeが漏らす台詞の数々に、私は思わず笑みがこぼれた。

脚本家のAmy Hennig氏は、決してビデオゲームのお約束の犠牲にならなかった。キャラクターたちは、誰もがただ喋るのではなく、その台詞にはちゃんとした目的が存在するのだ。ジョークや世間話がキャラクターを形作り、それがプレーヤーの共感を呼ぶと共に、キャラクターに歴史と目的を与えている。

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だがそうした会話には、往々にして周辺環境や目標に関する詳細が含まれている事がある。多くのデベロッパーが固辞するビデオゲームのお約束のように、通常ならばカット・シーンで機械的に説明してしまうところだ。

更にHennig氏は、いかにもビデオゲームというものではなく、現実の人間のようにキャラクターたちが振舞う事が不可欠である事を理解しているようだ。ChloeとDrakeが建物の端に近付くと、Chloeが「あれを登れっていうの?」と聞くと、Drakeが「まぁな・・・大抵はそうだ」と返す。

このやり取りは、カメラを必要以上に動かすなどの映画的な演出などをせずに、プレーヤーに次の目的を伝えている。明るく面白いやり取りだが、自分自身が立たされる窮地がいかに馬鹿げているか、Drake自身が認識している事も同時に示している。些細で重要性の低いやり取りではあるが、彼らの行動に説得力が出る。

対照的に、Wiiの期待作の一つであるSilent Hill: Shattered Memoriesでは、説得力が皆無な状況ばかりなせいで、没入感を削いでいる。例えば、こぼれ落ちそうな胸をした美人警官が、物凄い吹雪の中で殆ど裸で主人公と会話を交わすシーン。もしNaughty Dogが同じシーンを演出したら、美人警官は防寒具に身を包み、会話は屋内で行われるだろう。

多くのスタジオが見過ごしているか、修正する予算や時間的余裕がないこうしたストーリーテリング上の要素は、まるでトランプ細工の家のよう。もし一人のキャラクターやその行動が場違いなら、全てが崩れてしまうのだ。

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Uncharted 2のストーリーテリングとゲームプレーは滑らかで、切り離す事が出来ないものだ。これは、開発チームが体験全体を管理し、演出する事を恐れていないお陰でもあるだろう。私はオープン・ワールドを探索するのが大好きだが(例えばCrackdownはお気に入りだ)、常に一本道のゲームの方が好きだった。全てのシーンがしっかりとプラン通りに設計され、全てのアクションには理由があり、開発チームが予定した通りに事が進んでいく。だからこそ、No More Heroesの退屈な使い走りや、GTAの負けるはずのないボーリングと違って、Uncharted 2には息を付く暇がないのだ。必ずしもデカければ良いというわけではない。

Evan Wells: 「一本道」という言葉がネガティブな意味で使われるのには、少し腹が立つよ。あくまで選択なんだ。私はFPSが大好きだし、TPSも好きだ。どっちかが上という事はない。ただの選択肢に過ぎないんだよ。我々が作ろうとしている映画的なゲームというのは、ゲーム全体の瞬間瞬間が全てスクリプト処理され、ぎっしりと中身の詰まった退屈な瞬間がないゲームだ。それをオープン・ワールドで実現するのは、不可能に近い。

オープン・ワールドの中身を満杯にする重荷を背負わずに済んだNaughty Dogは、Uncharted 2の世界を現実的なディテールで埋め尽くした。Drakeが着地した時に巻き上がる砂埃、ぶら下がると崩れて壁に向かって垂れ下がる看板、そばを走ると飛び立っていく鳥。こうしたニュアンス、些細な事柄が、他の多くのゲームに欠けているリアリズムを、Uncharted 2にもたらしている。

他のデベロッパーがこうした点をないがしろにしていると言っているわけではなく、実際にこだわっているのだが、本作ほど徹底した作品はまずない。ボイス・アクトとモーション・キャプチャーへのこだわりに加え、破裂したパイプや雪の結晶がリアリズムを強化し、没入感を高めているわけだ。

Evan Wells: そうした細かなエフェクトなどに、必ずしも誰もが気付くというわけではない。実際、気付かれない方が、我々の仕事が上手く行ったという証でもあるんだ。我々のアニメーターはどんな状況でも、「ここでDrakeがつまずいたらクールじゃないか?それか、飛び退きながらDrakeがたじろいだらどうだ?」と言えるんだ。Drakeだけじゃなく、どのキャラクターにでも、山ほどのアニメーションの層を付け足していく事が出来る。お陰で、環境に溶け込むんだ。

Naughty Dogの限界はもはやテクノロジーではなく、単純にマンパワーと資金だとWells氏は言う。

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Uncharted 2もお約束とは無縁ではない。だが、そのお約束とは、映画のそれであって、ビデオゲームのものではない。それ自体、一種の賞賛でもある。あらゆる面でハリウッドの大作と比較出来る作品であり、そこに、スリリングなインタラクティビティが加わるのだ。多くの批評家も、ゲーム・オブ・ザ・イヤーの最有力候補としている。

だが私にとっては、それ以上だ。本作は、ビデオゲームがインタラクティブであると同時に映画的になれるという証明であり、ビデオゲームにも、好感の持てる共感出来るキャラクターと、真実味溢れる世界を構築出来るという事なのだ。こうした映画的な質の高さが、ゲームプレーを犠牲にする事なく、その追加要素として存在する。

Naughty Dogの最新作をプレーした今、当然ながら湧きあがってくる疑問が「次回作は?」というものだ。これに関してWells氏は答えをぼかしたが、Nathan Drakeのアドベンチャーはまだ終わりではないようだ。

Evan Wells: 次に何をするか、まだ決まっていないんだ。Unchartedの更なる続編をいつか作るという事に関しては確かだが、続編を作るという事がいかに大変か、今なら良く分かるよ。

Naughty Dogは今後も自らの作品の事後分析を続け、Unchartedの基本に忠実であり続ける事を心掛けている。続編では、フォーミュラに忠実でありながら、革新を試みるのだ。

Evan Wells: 現状の核となる要素を補足するもので、ユーザーに愛されている要素を犠牲にせずにUnchartedをより優れた作品にするもの。一般的な言い方になってしまうが、続編を作る時はそういう考えで臨んでいるんだよ。

それまでは、ゲーム業界全体が彼らに追いつかなければならない。

[ソース: IGN]

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