2010年03月31日(水)03時52分

【コラム】ゲームの適正価格とその是非

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ゲーム開発費の高騰が叫ばれる今世代、ゲーム・ソフトの適正価格とは?IGNによるコラムを。

私はとにかくケチだ。スコットランド/アイルランドの血のせいかもしれないが、19.99ドルで買える物に20ドルを払う事は断じてない。何か欲しいものがあったら、その商品の本来の価値を独断的に判断し、その価格かそれ以下で買えるまで、ひたすら待つのだ。

全てのゲーム・ソフトを60ドルの価値があるとは判断してないから、私はゲーム業界の天敵という事になるだろう。ほぼ全てのゲームは60ドル(任天堂は50ドルだ)なのだから、出来の悪いゲームだけでなく、出来の良いゲームにもそのスタンダードは適用される事になる。確かに、Bayonetta、New Super Mario Bros. Wii、Assassin’s Creed IIといったタイトルはマストなタイトルだし、私もプレーしまくった。だからといって、金を簡単に出すわけには行かない。少なくとも定価は。

懐だけの問題でもない。Metroid: Other MがE3で発表された時、我々は狂喜乱舞したし、見た感じでは正にプレーすべきゲーム・リストのトップに位置している。ただ、これまで横スクロールのゲームに50ドルを払った事はないし、ちょっとしたスタイリッシュな小技を除けば、Other Mは正にそれなのだ。昨今、ああいうジャンルのゲームには、出せて10ドルか15ドルだろう。それもダウンロードでだ。

つまり、ビデオゲームにおいては、固定化された価格制度は筋が通らないのだ。深く考えない限りは。

価格分の価値というのはゲームでは大きな問題であり、60ドルで手に入るものの差があまりに大きい。キャンペーンは12時間ほどかもしれないし、6時間、もしくは存在すらしないかもしれない。マルチプレーがあったりなかったり。教えて欲しい。15時間のキャンペーンは、8時間のキャンペーン+マルチプレーと同等なのか?もしくは、10時間のキャンペーン+オフライン・マルチプレーならば?

その答えは人それぞれという事になるだろうが、価格と中身は一致しないという事だけは確かだ。短くバグだらけのRogue Warriorが、その10倍以上のボリュームがあり、遥かに洗練されているFallout 3と定価では同じなのだ。だが、Rogue Warriorがボッタクリだとすれば、Fallout 3は安過ぎるだろう。Capital Wastelandを隅々まで探索すれば、ゆうに60時間から100時間はかかる。1ドルに換算すれば物凄いお得。Bethesdaが損をしているのではないかと思うほどだ。

metroid.jpgMetroid: Other M

Atari 2600のカートリッジは大体20ドルから30ドルで、ActivisionやParker Brosといったセカンド・パーティーのものは、Atariのファースト・パーティー・タイトルよりも若干安い。だがブランドと質が重要なら、評判は更に重要だ。人気アーケード作品の移植は大抵値が張り、Atari 2600のPac Man(1982年に最も期待されたタイトルだ)は他のカートリッジよりも高かった。理由は、1982年に最も期待されたタイトルだからだ。需要と供給である。これは批評家の袋叩きに遭い、供給が需要を500万ユニットほど上回った。その直後、ゲーム業界全体がクラッシュしたのだ。やったぜ!

なんにせよ、価格のフレックス制にもファンはいる。Activision Blizzardの社長Bobby Kotickは、ソフト価格値上げへの願望を隠していない。噂によると、KotickはCall of Duty: Modern Warfare 2を70ドルに引き上げようとしていたという。北米では実行されなかったが、イギリスのゲーマーは数ユーロ余計に支払う羽目になったし、PCゲーマーはActivisionの稼ぎ頭をプレーする恩恵に預かるため、10ドル余分に支払う事となった。その分がマルチプレーの専用サーバーに当てられなかったのは残念である。

Kotickが一律に価格を引き上げなかったのは何故だろうか?何も、現在のクリスマスのゴーストが待ったをかけたわけではない。ゲームの価格を50ドルから60ドルに引き上げたのと同じ面々が、ノーと言ったのだ。

Microsoft、Sony、そして任天堂が、最終的には彼らのハードウェア向けゲームの価格を決める。あえて犯人を挙げるなら、それは競争相手の1年前にXbox 360を発売し、コストを相殺するために60ドルという価格を導入したMicrosoftだ。任天堂だけなら、必要性のない値上げはしないだろう。彼らのゲーム機は、初日から利益を生んでいるのだ。それか、価格維持をしたとして2002年に欧州委員会から2億ドルの罰金を科せられた事が身に染みているのかもしれない。どちらにせよ、初年度の360ソフトの殆どが移植元のPS2版と殆ど変わらなかったにもかかわらず、PS3とWiiが発売される頃には、60ドルという価格がすっかり定着していたのだ。

確かに強引だったが、それが機能した。人は往々にして「高価」を「より優れている」と思う傾向があり、ゲーマーが望んでいるものが一つあるとすれば、それは「より優れているもの」なのだ。

では、そのお金がどこに行ったのかと思うだろう。パブリッシャーが利益をあげ、デベロッパーがロイヤリティを得るまでに、様々な経費が必要となる。数字は上下するが、大抵そういうものだ。

60ドルのゲームは卸値で45ドルから48ドル。残りは小売店の取り分だが、彼らを悪く思わないように。利益は僅か1ドルか2ドルほどだ。1本に付き4ドルほどが開発キットや諸経費、ライセンスやディストリビューションなどをカバーする。ディスクやパッケージなどの製造費が3ドルほどで、手が込むほど値は張る。パブリッシャーがどれだけ力を入れているかにもよるが、7ドルほどが宣伝費となる。大規模な宣伝キャンペーンを行えばもっとかかるし、宣伝しなければ少なくて済む。

更にそこに、ビッグ・スリーの取り分がある。ハードウェア・メーカーの取り分は7ドルほどだが、ビッグ・タイトルは交渉で引き下げる事も出来る。独占権が絡む場合は特にそうだ。そして残った定価の半分弱が実際のゲーム開発費を埋め合わせる格好になるが、ここ数年は開発費が馬鹿みたいに高騰しているのだ。

4212.jpgCall of Duty: Modern Warfare 2

最も開発費を食うのがデザインとグラフィックで、オープン・ワールドやモーション・キャプチャー、映画的な見た目の美しさは、ドンドン開発費を高騰させる。A級作品の場合、2000万ドルが出発点。Modern Warfare 2の最終的な開発費は4000万ドルから5000万ドルに達している。アカデミー賞にノミネートされた映画「ディストリクト9」は、僅か3000万ドルしかかかっていない。大成功を収めたCall of Duty 4: Modern Warfareを超えるため、Activision Blizzardは馬鹿みたいに金を注ぎ込んだ。これもユーザーの需要に応えるためだ。言い換えれば、ゲーマーは「より優れたもの」を求め、それはつまり「高価」という事になる。

次回作は必ず前作を上回らなければならない。これがゲームの黄金律だ。だからこそ、ディスク1枚のMass Effect 1と同価格のディスク2枚組のMass Effect 2が生まれた。この5年間、常に競争相手の一枚上を行って来たBobby Koticksが、5ドル、10ドル、15ドルの値上げに青信号を出していないのは少々驚きだ。

おっと、既に彼らは実行に移しているんだった。単にダウンロード・コンテンツと呼んでいるだけだ。

商品には何でも、買い手が付かなくなる上限が存在する。70ドルのModern Warfare 2では今ほど売れなかっただろうし、パブリッシャーはその分を小売店に補填しなければならない。そこで、比較的安価で開発が可能なダウンロード・コンテンツの登場だ。今ではゲーム・デザインの核となっている。マップ・パック、拡張パック、新エリア、新ミッション、ミニ・キャンペーン・・・ゲームそのものよりも先に完成している事もあり、利益率が非常に高い。Fallout 3のアド・オンを全て購入したら、60ドルのゲームは110ドルになる。だからといって、消費者は恐らく気にしないだろう。

これが、価格を上げずに価格を上げる素晴らしい方法だ。ゲームのアラカルトだと思えばいい。好きなものを買い、そうでないものは無視する。パブリッシャーは儲かり、基本価格は据え置き。これは良い事だろう。

金を叩く際の私の個人的な精神的必要性はともかく、全てのゲームにスタンダードとなる価格があるという事実は気に入っている。苦闘する新規タイトルとモンスター・フランチャイズが同じ土俵で戦う事になるし、宣伝攻勢をかけるゲームを相手にしても、良いゲームならチャンスはあるのだ。その一貫性が気に入っているし、全てのタイトルや続編、プラットフォームでさえ同じ共通のスタンダードが適用される事になる。何よりも、デベロッパーに更なる努力を促す事になるわけだ。

市場が飽和状態にある事は彼らも理解している。消費者の60ドルを必死に奪い合っているのだ。ハードコア中のハードコアでさえ、無数の可能性(全てのプラットフォーム、2009年に全世界で発売された数千のタイトル)の中から、1年に20かそこらのタイトルしか買わないのだ。既に確立されたシリーズでさえ、デザインの初期段階から直接の競争相手を超える事を狙っている。消費者の注目を引き付け、必ず買ってもらえるような製品を提供しなければならない。60ドルが超お得であると感じてもらう必要があるのだ。

steam.jpgValve運営によるデジタル配信サービスSteam

パブリッシャーも、いつどこで課金するか、独創的になってきている。Microsoftのプラチナ・コレクションは古いゲームのセールスを復活させるし、アイテム課金もゲーム内広告と同様にPCからゲーム機へと進出してきている。SteamやDirect2Driveといった、デジタル配信サービスとパブリッシャーの関係も成熟してきた。デジタル配信なら製造コストも安く済むと同時に見返りなども多いが、彼らが試してきたアラカルテ・システムを全般的に進化させるためにも利用できるだろう。

方法はこうだ。ゲームの発売後、キャンペーンやマルチプレー、オンライン協力プレーといった個別のゲーム・モードを、各40ドルで販売するのだ。もしくは、早くダウンロードしたい場合は高い価格を支払い、徐々に価格を下げていくもの良い。ありえないって?だが、Modern Warfare 2は発売から3ヶ月で40ドルまで下がっているが、セールスが打撃を受けているわけではない。我々はホリデーにプレーするためにプレミア価格を支払ったのだ。そして、それで何の問題もない。

確かに、本当に欲しいソフトのためにフル・プライスを喜んで払っていた時代もあった。同時に、多くのゲームをレンタルしたり、友人から借りたりもしていた。価格が安くなればもっと多くのソフトを買うだろうが、誰も財布を空にしろと強制はしていないのだ。ゲームは純粋に個人の自由意志による強迫観念であり、現在は需要と供給のバランスが偶然にも取れている状態だ。固定化された価格というのは、ゲーマーとデベロッパーの間での契約のようなもの。一方が血と汗をゲームに注ぎ込み、もう一方がそのゲームを買うために血と汗を流すのだ。どちらかが駄目になると、共倒れになる。

少なくとも現時点では、それで何の問題もない。

[ソース: IGN]

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