2010年09月21日(火)04時04分

【インタビュー】カプコン稲船氏が語る、日本ゲーム業界の今後

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日本のゲーム業界の現状を危惧するコメントを多く出しているカプコン稲船敬二氏に、NY Timesがインタビュー。その真意を聞いています。

▼ 貴方は日本のゲーム業界に対してとても批判的で、昨年も日本に関して非常に悲観的なコメントを出していましたが、それ以降何か進歩はありましたか?

稲船敬二: 東京ゲームショーで辺りを見回しても、酷いゲームしかない。日本は少なくとも5年は遅れているだろう。まるで、未だに旧世代機向けのゲームを作っているみたいだ。カプコンはかろうじて付いていってる。アイディア、ゲームプレー、デザイン。そこには多様性も独創性もない。

▼ なぜ日本がそこまで遅れていると?

稲船敬二: 多くのデザイナーは、得意なジャンルに固執する傾向がある。決まった方程式から離れないんだ。もうそれは通用しない。グラフィックを向上させるだけでは駄目で、それでは競争に勝つ事は出来ないんだ。

ビジネス面でも、投資が追い付いていない。1本のゲームに40億円以上、宣伝に20億円を投資する必要があるが、日本の会社はそれが出来ない。ゲームへの投資という面でも、欧米に負けているんだ。悪循環、デフレ・スパイラルに陥っている。投資がなければゲームは売れず、ゲームが売れなければ投資は出来ない、というわけだ。

▼ 貴方は欧米向けのゲームを作ろうとしてきましたが、Shadow of Romeなどのように、それが困難な事も多々あります。それに関しては?

稲船敬二: Shadow of Romeは失敗だった。表面だけを欧米化したんだ。「こうすれば受けるだろう」と単純に考えてしまった。目を青くして髪を染めるような、極めて表面的なものに過ぎない事に気付いたんだ。もっと掘り下げる必要がある。より真剣に欧米を研究しなければならないんだ。そこで、頻繁に欧米を訪れるようにした。グローバルなアイディアを生み出すためにね。

海外で日本のゲームがかつてのような人気を取り戻す事は、決して不可能ではない。しかし、今のままでは無理だろう。私は寿司が好きだし、欧米でも寿司は大人気だが、日本と全く同じ寿司を欧米で提供するのでは駄目なんだ。

ロサンゼルスでよく「なんだこの寿司は?」と思う事があるが、海外で人気の寿司は日本とは違うんだ。

▼ Biohazardは海外でも売れる一方で、Monster Hunterは日本でしか売れていません。

稲船敬二: Biohazardの方が成功している。主人公が英語を話すアメリカ人だからね。でもそれにはリスクもあって、どちらでもないゲームを作ってしまうと、日本でも海外でもコケてしまう。Monster Hunterは、核の部分から操作性に至るまで、日本のゲームそのものだ。何かを変えたら、日本ではもう売れなくなってしまうだろう。

▼ では、将来的に日本向けと海外向けで別のゲームを作る事は?

稲船敬二: 基本的には世界的に売れるゲームを作りたいと思っているが、中には日本でしか売れないゲームもあるかもしれない。それは問題ないんだ。利益が出る限りね。

しかし、日本は世界のゲーム市場の8%でしかない。だから、日本市場だけで利益を出すのは、年々難しくなっているんだ。

▼ 欧米のデベロッパーとのコラボレーションや買収も増えていくと?

稲船敬二: 海外の会社を買収するというのは、スタートに過ぎない。結婚と同じだよ。カプコンはBlue Castleを買収したばかりだけど、結婚というのは長いプロセスだ。すぐに良いゲームが作れるというわけじゃない。

Lost Planet 1は私が欧米向けにデザインしたが、Lost Planet 2を作った人間は方向性を誤った。日本的にし過ぎたんだ。まるでMonster Hunterのようなゲームにしてしまった。

▼ 欧米市場に入り込むためには、他にどんな戦略が考えられますか?

稲船敬二: アメリカと真正面からやりあう事は不可能だ。アメリカ人とバスケで勝負するようなもので、180センチの日本人では2メートルのアメリカ人には敵わないだろう。違う戦略があるはずだ。私の戦略は、ゲームにロボットを入れたり、ユニークで苛酷な環境を作り出す事。しかし、Lost Planet 2は方向性を見失った。

▼ カプコンで自分がやりたい事が出来ると思いますか?

稲船敬二: そう思いたいが、どんどん難しくなっている。力づくで強引に色々と進めてきたが、これ以上何が出来るか分からない。私と会社ではマネージメントのビジョンが違うんだ。私自身は全世界に行き渡るゲームを作りたいと思っているが、カプコンはグローバリゼーションを真剣に捉えていない。欧米人の生活を研究し、彼らにアピールするゲームを作りたいんだ。

▼ 他にはカプコンのどこを変える必要があると思いますか?

稲船敬二: カプコンは報酬の仕組みを改める必要がある。モチベーションが不足しているんだ。それに、会社の仕組みとして、責任者が明確ではないのは問題だ。

そうした事を一つずつ変えようと、私は長年戦ってきた。しかし、経営陣が変化に抵抗しているんだ。彼らは開発者を馬鹿だと思っていて、ビジネスを理解していないと考えているから、私は理事会に加わる事が出来ない。そこがカプコンと任天堂との違いだ。任天堂では、理事会の80%が開発者上がりの人間で構成されている。カプコンには1人もいない。経営陣は自らの利益を守る事しか頭にないんだ。

カプコンが変われば、日本のゲーム業界も変わると感じている。カプコンは真の意味でのグローバル企業ではない。かろうじて食い付いている程度で、独りよがりになっているんだ。我々は経営方針を変えなければならない。

▼ 他の日本のデベロッパーで上手くやっていると思う会社はありますか?

稲船敬二: Level 5は先を見据えている。将来的にはカプコンを超えるだろう。

▼ 日本のゲーム市場がグローバル化するには、他に何が必要だと?

稲船敬二: 北米市場に入るにはもう遅すぎるだろう。何年もかかる事だ。次の巨大な市場は中国だ。私の視線はアジアに向いている。韓国からも学ぶ必要があるし、中国に進出する必要もある。

日本はゲーム世界においては隔離されていて、何かが変わらない以上、終わりを迎えるだろう。

▼ 日本市場に対してそこまで批判的だと、風当たりも強いのでは?

稲船敬二: 私は日本のゲーム業界は死んでいると思っている。そういう事を言うと裏切り者と呼ばれるが、私は日本を愛しているよ。救いたいんだ。日本人はあいまいにぼかす人種で、ネガティブな事を言いたがらない。見たままを言おうとしないんだ。でも現実に向き会わなければ、悪化するだけだ。向き会えば、何かが変わるかもしれない。変わろうとするだろう。

世界の売り上げランキングを見るたびに、凄いショックを受けるんだ。カプコンのランクがとても低くてね。どう見ても死んでいるよ。Biohazard 5は500万本売れたのに、それでも不十分なんだ。私も龍馬も、まるでキチガイのように扱われている。龍馬は既得権益によって潰され、暗殺された。もし生きていたら、海外に渡り世界を見れていたかもしれない。

▼ 貴方も誰かに狙われていると?

稲船敬二: 中世日本なら殺されているだろうね。

[ソース: NY Times]

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