2011年07月30日(土)00時43分

【インタビュー】板垣伴信氏 インタビュー

THQから2013年に発売が予定されているDevil’s Thirdを開発中のValhalla Game Studiosの板垣伴信氏に、Gamasutraがインタビューを敢行。日本のゲーム業界の現状から、自らのゲーム開発哲学までを語っています。

▼ 以前お会いした時から状況は大きく変わりました。

板垣伴信: ああ、最高だよ。最高だ。

▼ 何故最高なんですか?

板垣伴信: 自由と責任だ。俺の発言や行動は、全て俺のものだ。

▼ 自分だけを代表していると?

板垣伴信: ああ。これ以上居心地の良い事はないよ。

▼ 責任についてですが、だいぶ責任が重くなりましたよね。

板垣伴信: ああ、以前も責任は背負っていたが、今は面倒な駆け引きをせずに済むようになった。

▼ 貴方は以前から有名ですが、今後は全てが直接自分に返ってくると?

板垣伴信: その通りだ。俺を愛してくれる人間もいれば、俺を毛嫌いしている人間もいる。色んな人間がいるが、それは充分に分かってるから、人とそうやって直接関わるのは良い事だと思ってるよ。

▼ THQとの馴れ初めについて教えてもらえますか?

板垣伴信: 俺がやり取りする相手は、ヘッドのDanny Bilsonだ。知っての通り、彼は映画も作れるし、小説や脚本も書けて、テレビもやれればゲームも作れるし、同時にビジネスマンでもある。そういう人間とビジネスをするのは非常に楽しいよ。

そういう人間は珍しいからね。でも、アメリカには、実際にゲームの作り方を心得ている経営者が日本よりも多いんだ。日本よりもそういう人間が多い。それは良い事だと思うよ。

ビジネスをする際、金の話は避けられない。それがビジネスというものだ。だが同時に、彼らはゲームの作り方を知っているから、良いゲームを作るには金が掛かるという事も分かっている。その2つの要素が一対一の関係に関わってくるから、極めて実践的だ。

日本の経営陣はというと、言ってみれば分かっている振りをしているんだよ。彼らは「ゲームが大好き」と口では言うが、その作り方は何も知らない。だから、「これをいついつまでに完成させろ、予算はこれくらいで、これだけの本数を売れ」といった指示を出す。全く実践的じゃないんだ。

▼ 最近は日本のトップ・クリエーターの多くがパブリッシャーを後にしていて、現時点では小島氏だけが会社に所属している状況です。先日は稲船氏がカプコンを退社しました。こういった状況をどう感じているのか、そしてその理由についてはどう考えていますか?

板垣伴信: それぞれ状況は違うだろうから、ハッキリとは言えないな。小島さんには小島さんの考えがある。三上さんや稲船さんなど、多くの人間が独立していった。俺が前述したような、日本の開発会社が抱える問題と関係しているのかもしれない。「もうこんな事やってられない」という事かもね。自分に自信がある人間は、自分の世界を探索する事が出来る。

だが、彼らが離れた会社の事を悪く言うつもりはない。そうじゃないんだ。ただ、彼らがそういう経験をしたのかもしれない、というだけだ。

重要な事なので付け足しておくが、三上さんはカプコンを退社したが、彼はカプコンのオーナーと今でも良い関係を保っているんだ。今でも友人同士なんだよ。

俺自身もテクモのオーナーと良い関係を保っているから、ただ社を辞めた訳じゃないんだ。彼らは俺を引き止めようとしたが、それが避けられないという事も承知していた。俺は何かしたかったんだ。やりたい事が常にあって、そうする。そういう事だよ。

▼ 経営陣について、稲船氏も貴方と同じ事を言っていました。ゲームを理解していない、と。

板垣伴信: そういう人間が多いんだ。俺はカプコンの経営陣は好きだ。辻本さんは最高だよ。

▼ 日本のパブリッシャーを見ると、クリエーターこそがテクノロジーや世界市場の開拓に関して大きな成功を収めていると思います。

板垣伴信: そうかもしれない。

▼ 貴方は先ほど、アメリカの経営者はゲームの事をより理解していると仰っていましたが、貴方がパートナーとなる会社に求めるものはそこなんですか?共感出来て、貴方の作品を理解してくれる人間を求めているんですか?

板垣伴信: まず、その答えはイエスだ。勿論だよ。もしそうじゃないなら、誰が割を食うと思う?ゲーマーだ。彼らが苦しむ事になる。

▼ その通りです。そして、クリエイティブ・メディアにおいてビジネス面だけで決定が下されると、無難な作品ばかりになってしまう。

板垣伴信: その通りだよ。日本のゲーム業界には、技術面だけでなくクリエイティビティと創意工夫に欠けている。彼らは文句ばかり口にするが、行動は起こさない。だから、文句を言う暇があるなら「行動を起こせ!」と言いたいね。

▼ Dead or Aliveでは最高の格闘ゲーム、Ninja Gaidenでは最高のアクション・ゲームに挑戦しましたが、最新作でもその哲学に変わりはないようですね。

板垣伴信: 既に答えは出てるようだ。

▼ ですね。

板垣伴信: そういう事だ。

▼ 貴方のゲームには常に、キャラクター同士や敵との干渉の仕方に肉体性を感じますが、こういうタイプのアクション・ゲームにはあまり感じられない肉体性をDevil’s Thirdにも持ち込もうとしているようですね。

板垣伴信: 勿論そうなるだろう。それが俺の存在理由だ。

答えを知っているというさっきの質問に関してだが、俺はそのためなら何でもする覚悟だよ。最高の格闘ゲームを完成させるには長い時間が掛かったが、達成出来たと思っている。だからこのジャンルで最高のゲームを作るには、時間こそ掛かるかもしれないが、達成出来ると確信しているよ。

▼ 目標が明確ですね。明確なゴールを設定するというのがゲーム開発へのアプローチの仕方ですか?

板垣伴信: そう。最初に突撃するのは俺だ。俺たちは軍隊だからね。

▼ スタジオのウェブサイトに貴方の哲学が掲載されていたのは面白かったですね。

板垣伴信: ああ、そうだな。

▼ 多くの会社は自らの哲学を公表しませんが、最近は増加傾向にあります。興味深い事に、貴方のようなやる気のある日本のクリエーターは、全世界に自分たちの主張を前面に押し出しているように見えます。Platinum Gamesも最近、同様の事をしていました。

当然ながら貴方は、世界中の人間が日本はピークを過ぎたと見ているという事を理解していると思います。貴方にはそうした見方を否定するだけの自信があるかもしれませんが、そう見られているという事実が、クリエーターをやる気にさせているとは思いませんか?

板垣伴信: 自分たちの主義主張を、明確に表現するスキルを持つ事が重要だ。いわゆるソーシャル・スキルだよ。君は多くの人間にインタビューしているだろうし、パーティーなどでも日本の開発者と会うだろう。日本の開発者は、必要とされるソーシャル・スキルを持ち合わせていないんだ。アメリカやヨーロッパのソーシャル・スキルだよ。

もしかしたら、ジョークを言ったりするユーモア・センスがないのかもしれない。彼らの物腰に問題があるのかもしれない。だから、そういうソーシャル・スキルを持っていない人間がゲームを開発する場合、異なる文化圏にも通用する、世界的なヒット作を作ろうとしても、非常に困難になるかも知れない。

意味分かるかな?

▼ 文化の問題かもしれません。日本文化とアメリカ文化というだけでなく、文化に対する幅広い理解と、自分が好きなものだけを好きでいる事の違いという。多くの開発者は、自分たちの好きな事だけを見ていると感じます。

板垣伴信: ああ、そうだね。その通りだよ。

▼ コピーに見えないような形で、様々な影響をゲームに反映させる事が出来なければいけない。オリジナリティが不可欠です。そのためには、現在の流行に対する幅広い理解を持つ事が求められると思います。

板垣伴信: 君が今言った事は、100%正しいよ。ゲームをプレーしてゲームを作ったら駄目なんだ。

▼ しかし、E3に出展されているゲームを見ると、多くのゲームが明らかに他のゲームを見て作られています。

板垣伴信: そうだね。そういったゲームも必要なんだ。そういうゲームがゴミってわけじゃないからね。楽しいゲームもあるし、必要だ。全員が俺みたいにギリギリの生き方をしなくても良いんだ。それはそれで問題だろう。

▼ (笑)ええ、そうかも知れません。しかし、貴方がコラボレーションしたいと思うような人材、貴方がスタジオに引き入れる人材は、何を理解していなければならないと考えていますか?

板垣伴信: 知っての通り、俺はパワフルな人間が好きだ。本当にクリエイティブで、自信に満ち溢れた人間だよ。だが、自信というのは内面から湧き出てくるものだ。自らの経験からね。自分の能力を知り尽くし、未来を見据えていて、それを証明出来なければならない。そういう人間を求めているよ。あと、クレージーな人間もお気に入りだ。

[ソース: Gamasutra]