2012年12月13日(木)03時29分

『The Last of Us』インタビュー - 世界観と女性キャラクターたち

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『The Last of Us』の脚本家や声優たちに話を聞いたインタビュー記事がVG247に掲載されています。

  • 機種: PS3
  • 開発: Naughty Dog
  • 販売: SCE

マックス・ブルックス著『The Zombie Survival Guide』 を読んだ人はいるかな。ゾンビ・アポカリプスを生き抜くための有益な情報を教えてくれる、架空のハンドブックだ。現実の出来事を基にした本ではないとはいえ、そこに書かれた情報は全て大真面目で、その結果として極めて恐ろしい一冊に仕上がっている。ブルックス氏が描き出す悪夢のような人類滅亡のシナリオに自分を当てはめてみると、恐ろしさは倍増だ。

物資や疫病などについて考え出すようになり、救援が来るかゾンビが飢え死ぬまで、どこくらい生き延びれば良いのか、といったことまで頭を過ぎり出すのだ。映画『ゾンビ』のように、モールに数週間立て篭もれば済むという話ではない。様々な入り組んだ要素を考慮する必要があり、殆どの人間は数週間どころか数日しかもたないだろう。

Naughty Dogが最新作『The Last of Us』で伝えたいのは、そうした感情だ。プレーヤーとキャラクターを一体化させ、一日長く生き残るためなら殺し合いすら辞さないような最悪の世界の真っ只中に、プレーヤーを帆放り込むのである。

湾岸戦争を生き延びたJoelと、先日発表されたばかりの新キャラクターで、ブラックマーケットのオーナーであるTessは、実に似た者同士。自らの目標を成し遂げるためなら何でもするタイプで、実際生き残るために卑劣な行為にも及んできた人物だ。

だがそこに、荒廃した都市部の恐怖とは無縁の隔離ゾーンで育った、比較的無垢な14歳のEllieが転がり込んでくる。好奇心と驚きを持って楽観的に世界に接する彼女は、TessとJoelの冷め切った心を氷解させる存在なのである。

致死性の菌類が人類の多くを死滅させ、不運な者たちをゾンビにしてしまった世界において、感情や思いやりは人を死に追いやる欠点と見なされる。だが、JoelとEllieが父と娘のような関係性を築き上げていくにつれ、そうした感情こそが生き残る理由になるということが明白になっていくのである。

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執筆作業

『The Last of Us』のクリエイティブ・ディレクターNeil Druckmann氏は、脚本の共同執筆を担当。恐怖に満ちた世界と、感情移入できるキャラクターを具現化するためには、JoelやEllie、Tessが実在する人物であるかのようにプレーヤーに信じ込ませなければならない。プロットが重たいこともあり、Naughty Dogはビデオゲームにおけるこれまでにない女性描写を追及する余地を得た。Druckmann氏自身、そしてNaughty Dogが強く望んでいることでもある。

EllieとTessというキャラクターにどうアプローチしたか、Druckmann氏が語ってくれた。

Neil Druckmann: 業界全体の動向や女性描写の方法といった、外部の影響からは極力距離を置くように心掛けた。そうしたことから影響を受けるべきではないというのが私の信条なんだ。自らの物語の核を成す真実を見つけ、そこを掘り下げていくことが重要だよ。

まずEllieから書き始めたのは、EllieとJoelの関係性、そして2人の旅路こそがこの物語の核だからだ。そこから2人の人間性を掘り下げていき、2人の内面や関係性の異なる側面を描こうと試みた。

その後、早い段階でTessというキャラクターを思い付いた。彼女は物語の序盤におけるJoelのパートナーで、ブラックマーケットで品物をやり取りする人物だ。サバイバルのためなら手段を選ばないという意味では、Joelに似たキャラクターだよ。

ブラックマーケットのディーラーとしてのTessというキャラクターを掘り下げるにあたり、Druckmann氏は貨幣利得や所有物、そして食料や水といった基本的な必需品に至る日常生活に不可欠な要素は、世界が崩壊しようとも消え去ったりはしないのだというアイデアを突き詰めることができた。実際、それらが殺し合いの原因となっているのである。

そこで私はDruckmann氏に、現代の生活にも存在する物資の独占や物欲といった題材を体現する存在としてTessを描けるのではないか、と尋ねてみた。

Neil Druckmann: そういった側面もあるし、このゲームの世界では物資がそのまま生死を左右するんだ。

食料や武器は十分にあるか?というアプローチを強いられているのがJoelやTessが生きている世界であり、物資を多く手に入れるほど、長く生きることができて、隔離ゾーンでの権力も増すんだ。

彼らは汚いことに手を染めることも多い。物語のネタバレをせずにどこまで話せるか分からないが、彼らは運命共同体であって、彼らの物資を奪うためなら殺しも厭わない連中がそこら中にいるような世界なんだ。必要とあらば、彼らは先制攻撃を仕掛ける心の準備ができているんだよ。

Tess

『24』のルネ・ウォーカー役で知られ、本作ではTessを演じる女優Annie Wersching氏に、Tessというキャラクターと、プロット全体における彼女の立ち位置について話を聞いた。

Annie Wersching: 彼女とJoelはこの世界におけるパートナーだけど、お互いにそれぞれ得意分野があるんです。

彼女は取引の交渉に長けていたりして、お互いの得意分野を上手く活用して生き延びている。そんな彼らの人生に、Ellieが飛び込んでくる。そこから話が大きく展開するんですよ。

実在感のあるユニークな女性キャラクターを生み出したいというNaughty Dogの願望も、Wersching氏がこのプロジェクトやTessというキャラクターに惹かれた理由の一つだという。

Annie Wersching: ビデオゲームのオーディションを受けるのは、これが初めてだった。何の予備知識もなかったので、脚本のレベルの高さには良い意味で驚かされましね。Tessはステレオタイプな女性キャラクターにもなりえたのにね。

Tessはステレオタイプな女性像からはかけ離れているし、キャラクター同士の会話や人物描写は、とにかく興味深くて現実味に溢れている。嬉しい驚きだったし、Joelを演じるTroy Bakerとのオーディションに臨んだ時は、右も左も分からない状態だったにもかかわらず、リラックスして演技ができたのにも良い意味で驚かされました。

Ellieを演じるのは、女優Ashley Johnson氏。JoelとTessの世界観に大きな変化をもたらすキャラクターにする、というNaughty Dogの狙いは明らかだ。

Johnson氏によると、Ellieが様々な問題を引き起こすだけの底が浅い少女であるという認識は的外れであり、本作に登場する多種多様な欠点を抱えたキャラクターたちと同様に、Ellieも第一印象とは大きく異なるキャラクターになっているという。

Ashley Johnson: Ellieは僅か14歳だけど、彼女が知る世界はこれだけ。彼女は毎日サバイバルをしてきた。朝食の心配をしたり、今日誰と遊ぼうか考えたりしたことがないんです。

普通の14歳の少女とは全く違っていて、私が最初のオーディションでとあるシーンを目にした時は、彼女が実際の年齢よりも遥かに大人で、平均的な10代とは全く違うことがすぐに分かりました。自分は14歳だと言い聞かせながら演技をする必要もなかったし、年齢のことは全く考えなくて良かったんです。

私にとっては、モーション・キャプチャーのスーツを着せられて、現場に放り出されたようなものだった。でも全員が協力的で、特にモーション・キャプチャーの経験が豊富なTroyは、どんな質問にも喜んで答えてくれたんですよ。

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迫真性の獲得

全身のモーション・キャプチャー、アカデミー賞物の脚本、そしてキャラクター主導型体験への尽力などのお陰で、Naughty Dogにとっても仕事がやりやすくなった。Druckmann氏は、『Uncharted』トリロジーの出来栄えが、ハリウッドをより身近なものにしたと信じている。

今では優秀な俳優を起用することも容易になっており、映画業界全体もゲームを信頼の置ける仕事先と見なしている。ゲーム業界全体に浸透しつつある高品質のストーリーテリングが、ゲームはただのお遊びであるという昔ながらの偏見を打ち消してくれているのだ。

Neil Druckmann: 『Uncharted』は、その演技と物語で数々の賞を勝ち取った。それがより多くの才能溢れる俳優を起用する切っ掛けになってくれたし、ビデオゲームへの出演を望む俳優も増えてくれたんだ。

題材が洗練され、キャラクターの深みが増していったおかげで、俳優にとっても魅力的な仕事になっているのは確かだ。ゲームを見下し、決してゲームの仕事はしないという俳優もまだ存在するが、そうした偏見は概ね消えつつあると思うよ。

『The Last of Us』は、プレーヤーが感情移入したくなるキャラクターが登場する魅惑的な物語を語るという、Naughty Dogの嗜好の延長線上にある。しかし、『インディ・ジョーンズ』のような大活劇や、粋な台詞の応酬は期待しないこと。『The Last of Us』は極めてダークな物語であるとJohnson氏は警告する。

Ashley Johnson: 私はこれまでテレビや映画の仕事をしてきたましたが、ビデオゲームには物凄い労力が注がれていると思う。アニメーターやデベロッパーたちは、もう2年以上も全力を尽くして働いている。彼らはもっと報われるべきだと思うわ。

Neilの脚本にはとてもダークな一面があって、ネタバレはしないけれど、あまりにダークすぎて撮影の日は一日落ち込んでしまったこともある。過酷な人生を強いられてボロボロになった人間の精神状態になりきるのは、それほど大変なことではなかったですね。これまで撮影した内容を思い返すと、相当大変な思いをしてきた、という感じなんです。

Druckmann氏は再びJoelを例に出し、本作は架空の世界を舞台にしているものの、プレーヤーたち、特に子供を持つ親たちは、Joelの苦しみやどん底状態におけるEllieとの絆に共感できるはずだと語る。

Neil Druckmann: このゲームの世界では、特に正しい答えというのが存在しないような、困難な選択を迫られることが日常茶飯事なんだ。それが徐々にプレーヤーの心を蝕んでいく。この物語の核は、父と娘の関係性なんだ。

陳腐に聞こえるかもしれないが、これは父と娘のラブストーリーであって、現実の体験が基になっている。私自身父親として、もし私がああいった状況に置かれたら、自分はどこまでやるだろうか?という風に考えるようにした。私にはこれといったスキルがないから、あの世界では長くもたないだろうけどね。

現実での体験やアート・スタイルからインスピレーションを得るほど、物語の真実味も増していくと思うんだ。

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女性問題

Naughty Dogはゲームの脚本やキャラクター設定に新たな前例をもたらそうと努力しているものの、Druckmann氏、Wersching氏、Jonson氏、そしてNaughty Dog全体も、ビデオゲームにおける女性描写の問題に懸念を示している。ビデオゲームというメディアの社会的地位を引き上げようとする試みの足を引っ張る、ゲーム業界の汚点であると見なされている。

Johnson氏は、『Tomb Raider』リブートにおける若いLara Croftを例に出し、ビデオゲームにおける女性キャラクターの描かれ方も変化しつつあると語る。

Ashley Johnson: ゲーマー、それも女性ゲーマーとして、私も当然ビデオゲームにおける女性描写に関しての意見を持っています。

過剰に性的すぎたり、囚われの姫だったり、単なる恋愛対象でしかないことが殆どで、「単なる男性キャラクター」とは対照的に、格好良い女性キャラクターはゲームに一人登場すれば良い方。確かに不快には感じるけれど、それが本作をはじめとするNaughty Dogのゲーム全般に私が惹かれる理由でもあるんですよ。

『Uncharted』にはElenaがいたし、Naughty Dogはとてもリアルなキャラクターを作っていると感じている。『The Last of Us』は特にそう。全員が欠点を抱えた現実的なキャラクターで、こういうのはビデオゲームでは稀なことだと思います。

『Tomb Raider』で興味深いのは、予告編でも垣間見れるLaraの弱さで、そこはクール。単なる超人じゃない、弱さや欠点を抱えたキャラクターを目にするようになったのは嬉しいことだし、良い方向に変化していくと思う。

Ken Levine氏が『BioShock Infinite』のジャケットは男性をターゲットにしていると認めるなど、ゲームのジャケットに関する問題も持ち上がっている。そこで私は、ステレオタイプな物以外に、女性がゲームのジャケットに登場することが何故ここまで少ないのか、意見を聞いてみた。

Ashley Johnson: 女性をジャケットに出さないのは、売り上げが下がるのを恐れているからじゃないかと思っています。決して性差別的なことを言うつもりはないけれど、格好良い男性をジャケットに登場させたゲームよりも、女性が前面に出たゲームは売れないという認識があるのだと思う。

Neil Druckmann: Ashleyの意見には賛成だ。ゲームのジャケットに少女や女性を出すと売り上げが下がる、という誤解がある。Ellieをジャケットの表ではなく裏に回せと言われたこともあったが、Naughty Dog側は全員拒否したよ。

ゲームのジャケットに関する問題で、Naughty Dogが自らの意思を貫いたというのは喜ばしい。ゲーム脚本のハードルを上げようという努力にも感心させられる。そうした努力が幅広いインパクトを残すことができるかどうか、実に楽しみである。

[ソース: VG247]