2014年04月16日(水)05時33分

インディ・ホラー開発者が語る恐怖演出のバランス

319.jpg『Amnesia: A Machine for Pigs』

ホラー・ゲームの目的はプレーヤーを心底怖がらせることにあるが、怖すぎるのも考え物。それだけプレーヤー層を狭めてしまい、しいてはジャンルの衰退に繋がってしまう。

主人公に反撃の手段を与えないことで恐怖を喚起することで高く評価された『Amnesia: A Machine for Pigs』のクリエイティブ・ディレクターDan Pinchbeck氏は、あくまでバランスが大事であると語る。

Dan Pinchbeck: 純粋に恐怖を引き出すだけの体験を作りたいなら、物語はあまり気にしちゃいけないと考えている。とにかく恐怖だけを追及するなら、怖すぎてプレーヤーがプレーを止めてしまうようなゲームを作ろうとしているということを受け入れなくちゃ駄目だろうね。

そこが『Pigs』で最大の試練だったし、ゲーム全般のクリア率の低さも併せると、何らかの答えを出す必要があるだろう。プレーヤーにゲームをクリアしてもらいたいと思う一方で、できるだけ多くのプレーヤーを最後まで導くために瞬間瞬間の恐怖レベルを下げてしまうと、一定数のプレーヤーを失望させることになってしまうんだ。

同じくプレーヤーは逃げることしかできない一人称のホラー・ゲーム『Outlast』では、テスト・プレーで泣き出してしまった女性もいたという。Red Barrel StudiosのPhillipe Morin氏とDavid Chateauneuf氏が明かす。

Phillipe Morin、David Chateauneuf: テスト・プレーヤーが泣き出してしまったことがあったよ。彼女は最初の40分ほどをプレーして、もう耐えられなくなってしまった。心労がたたったのかもしれない。外に出て泣き出してしまい、もう続けられないと言われたよ。

そのためには、恐怖演出を抑えることも重要だとPinchbeck氏。

Dan Pinchbeck: 『Engine Room』のようなステージは、ある程度激しさを抑えてある。元々はというと、文字通り耳をつんざくような爆音をステージ全体に流して、プレーするのがひたすら不快で楽しくないステージにする予定だったんだ。となると、プレーヤーはどこまでの罰に耐えられるか、という問題になってくる。もっとやっちゃってもいいんじゃなかと思う自分もいたが、すると物語に没入していたのに、その強烈さに追いやられてしまうプレーヤーを出してしまうことになるんだ。

1014.jpg『Outlast』

ホラーにおいては、観客に不快感を与える描写も珍しくないが、そこでもやはり越えてはならない一線が存在するという。

Phillipe Morin、David Chateauneuf: しばらくの間、NPCがプレーヤーをレイプする場面を実際に考えていたんだ。『脱出』という映画では、とある登場人物が悪役にレイプされる。仮にこのような場面をゲームに取り入れた場合、悪役に対する気持ちにどのような変化があるだろうか、想像してみて欲しい。当然これは極端な例だし、単なるショック演出に感じられるかもしれないが、最終的にはより深い体験を生み出すためなんだ。

Dan Pinchbeck: 豚が死体とヤッている場面があったんだ。問題は、豚が誰かをレイプしているように見えてしまったことだ。最初は女性の死体をヤッているはずだったが、それがレイプに見えてしまったので、死体を男性に替えたら、今度はゲイのレイプに見えてしまった。結局何も変わらなかったね。豚の獣性を表現しようとしたんだが、その低俗さを正当化するだけの付加価値が存在しなかったんだ。

低解像度の2Dでありながら、サウンドやエフェクトを巧みに利用することで恐ろしい空気感を見事に演出したことで高く評価された『Lone Survivor』を手掛けたJasper Byrne氏も、ある程度の抑制は必要だと同意する。

Jasper Byrne: 細かな部分を一つか二つ削除したかな。ハサミの場面のように、ためらった場面も幾つかある。主人公の精神状態によって異なる場面も複数存在するが、一番過激なものは少し抑えることにした。一部のサウンドの不快感を多少和らげたんだ。

悪趣味に陥らない限り、あまり問題だとは考えていない。ゲームプレーは楽しんだし、2Dで160×90の解像度も気にならないが、『Lone Survivor』を最後までプレーしないことにしたと多くの人に言われたよ。そういう人は、単に怖いゲームが向いていないんだ。

近年のサバイバル・ホラーを代表する2作『Outlast』『Amnesia』は、一人称でプレーヤーに武器を与えず、スクリプト演出を多用することでプレーヤーを怖がらせようとしているが、ホラーにスクリプト演習は不可欠なのだろうか?

Phillipe Morin、David Chateauneuf: プレーヤーを居心地の良い場所から引きずり出すことが重要なんだ。視界といったプレーヤーの感覚を限定することも一つのやり方だが、それ以外にも沢山の方法がある。『シャイニング』には日中の場面も多いが、それでも効果的なのは、歪んだ場面に満ちているからだ。『ザ・リング』も同じだよ。ああいった映画は我々と地続きの世界から始まるが、突如として現実をゆがめてしまう不快な要素を登場させていく。暗闇には幼少期に遡る本能的で直接的なインパクトがあるから、ホラーのお約束になっているが、他にも同じくらい効果的なやり方があるかもしれないんだ。

ホラーにおいては、ペース配分も極めて重要だ。オープンワールドも可能だが、プレーヤーに提供されるあらゆるオプションに適応した細かなスクリプト演出を詰め込む必要がある。が、それだと山ほどスクリプト場面がなくてはならない。どちらも有効かつ実行可能なアプローチだが、『Outlast』のように11人では無理なんだ。だから、我々の場合はよりリニアなアプローチを選択したということだ。

Dan Pinchbeck: 直線的な構造やスクリプト・シークエンスの方がはるかに扱い易いのは疑いようのない事実だ。焦点を絞った体験で感情の流れを作ることが容易になる。『Pigs』のステージの幾つかは当初もっと広大で、豚に追い回されるエリアとしてデザインしていた。より迷路のような構造で、スクリプトよりもAIシステムの比重を増すことで突発的な遭遇を狙ったんだ。しかし、AIが不充分だったし、修正できる経験豊富なプログラマーやデザイナーがいなかった。スクリプトはその性質上面白味に欠けるという点では同意していたものの、(『Pigs』のパブリッシャー)Frictional Gamesはより多数のプレーヤーが満足のいく体験ができる確立を守ることが鍵だと感じたので、マップは縮小され、より直線的に修正されたんだ。

今では我々もAIに慣れたと思うし、もしやり直せるなら、狩られるエリアや突発的な恐怖の方がより面白いやり方だと思う。強力な物語とそういったやり方を融合させることは可能だと思うし、それほど斬新でもないんだ。FPSのデザイン・モデルに、より伝統的なホラー・デザインを繋ぎ合せるだけのことだからね。

320.jpg『Lone Survivor』

一方、『Lone Survivor』でByrne氏は、プレーヤーを不安にさせるムード作りに最も力を入れたという。

Jasper Byrne: 低解像度の2Dにしたかったのは、正にそのためなんだ。私が時間をかけたのは雰囲気だ。特に、平面の制限を考慮に入れたものだ。ムードを醸し出すためにサウンドとビジュアルに尽力したし、ライティングとエフェクトなどにも力を入れた。ライティングとエフェクトを作るのに5、6ヶ月を要したと思うよ。実際に動かしてみないと成功したかどうか分からないからね。

前述の3作品はどれも小規模スタジオによるインディ作品だが、「幅広い客層にアピールするために水で薄めずに済むことがインディの素晴らしさ」と語るMorin氏とChateauneuf氏に、Pinchbeck氏も同意している。

Dan Pinchbeck: 超大作になるとリスクが大きく、水で薄めることは避けられない。小規模のスタジオやゲームはコストも安いので、客層を絞った、ニッチな体験を作ることが可能になる。それが優れたホラーを作る唯一の方法だろうね。

[ソース: IGN]

最新記事